Chapter13(3/5ページ目)
疑いの念

僕とレッカーのおじさんは、奥の整備室に入った。

話をしてくれるついでに、僕のマシンのチェックもしてくれるそうだ。

相当無理をしたから、もしかしたら、ということでやってもらうことになったのだ。

「・・・うん、タイヤとシャフトあたりは問題ないな」

「そうですか」

「ああ。えっと・・・ああ、そうだ・・・レベル2の敵のことを話すんだったな」

「・・・」

「明日お前たちが戦うのはレベル2に出場するチョロQのうち、下位4台だ。お前たちは、確かBグループだったな」

「B?」

「だって、たった4台しか入れ替わらないんじゃ、昇降の激しさも無くなるだろ」

「じゃあ、僕たち以外にもいるってことですね」

「当たり前だ。レベル1のレースなんてあちこちで頻繁に開催されている。初心者の駆け出しレーサーが多いんだからな。そして、その分レベルアップの機会も与えないといけない。上位レベルのチョロQは、そんな彼ら相手に立ち向かってくるわけだ。下位レベルの奴に負けるなんて、恥も同然だからな・・・」

「そうですか・・・」

「で、Bグループの敵は・・・まず『ブラウンハンター』からいくか」

「『ハンター』?」

「別にそこは気にすることはないだろう。命を狙ってくるわけでは無い。彼の走りは、実にマニュアル通りだ」

「・・・と、言いますと?」

僕は尋ねてみた。

おじさんは、マフラーをチェックしている。

「良く言えば堅牢確実、悪く言えば機転が利かない」

「へぇ・・・」

「彼は一見地味な走りをするが、いつの間にか抜かされていることもある。特に、奴のカーブでのグリップ走行はかなりのものだ」

「僕はドリフトで攻めるかな」

「そう上手くいくかねぇ・・・とにかく、隙が少ないから気を付けるんだ」

「はい・・・」

1台目はブラウンハンター。

マニュアル通りな走りをする、隙の少ないチョロQだ。

「次に・・・『ハイドロチャンプD』だな。新チョロQワールド出身だ」

「あっ、ハセガワ3131と同じだ」

「うん、もしかしたら、彼に聞けば良く分かるかもな」

2台目はハイドロチャンプD。

ハセガワ3131に会えたら、すぐに聞こう。

「お次は・・・『ピース』だな。聞いたことが無いだろう」

「はい、確かに」

「彼はドジッた運転で相手を惑わす。ちょっと危険な奴だな」

「平和『peace』とは大違いですね」

「おい、ちょっと寒いぞ・・・」

3台目はピース。

ワザとドジッた運転で相手を惑わすチョロQだ。

「最後は・・・『グランポール』、ちょっと珍しい名前だな」

「で、そのチョロQの特徴は?」

「お前に似ているかもしれん」

「へっ?」

「だから、決まった走りというのが少ない。お前もそうだろう」

「僕は別に・・・」

「俺がお前のレースを見る限り、その場その場の走りが多い気がするぞ」

「あれ、見たことあるんですか」

「お前はレベル1の中で一際目立っている、噂のルーキー的存在だ。俺がチェックしないとでも?」

「そうですか・・・アンブレラポートのおじさんとは大違いだ」

「ああ、あいつはレースには無頓着だから、あの街にいるんだ。あそこには公式レースが無い」

「・・・非公式レースもあるんですか?」

僕は思わず突っ込んでいた。

わざわざ「公式」なんて言うものだから、「非公式」もあるはずだと思った。

そして、おじさんの作業の手が一瞬滑った。

丁度、フロントの吸気口のクリーニングをしているときだった。

僕は思いっきりくしゃみをしてしまった。

「・・・それは置いておこう。一応、『ある』とだけは言っておこう」

「・・・」

「さ、大体敵の特徴は分かったか?」

「はい、ありがとうございます」

「あと、軽くお前のコンディションをチェックしてみたが、特に異常は無い。後は休んで体力をつけておけば大丈夫だろう」

「はい、それじゃ、そろそろ休ませてもらいます」

僕は整備室を出て、ファクトリー奥のパーキングエリアに向かった。

今日は無理しすぎたから、本当に休まないと。

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最終更新日(11.04.21)
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