Chapter13(4/5ページ目)
疑いの念

だが、すぐには休めそうに無いものがそこにあった。

僕に気付くなり、すぐに声をかけてきた。

「よう! 1ヶ月振りだな!」

「やあ、久し振り」

バラートとハセガワ3131だ。

2台とも、このファクトリーに泊まっていたようだ。

僕は嬉しい反面、早く休みたい気持ちもあった。

だが、最終的に嬉しい気持ちが勝った。

「わあ、2台ともここにいたんだね」

「まあな、それより・・・どうだったか? この1ヶ月は」

「うん、まあまあ」

「何だよ、その中途半端な返事は・・・」

「色々あったからね。そっちはどうなの」

僕は逆に尋ねた。

「俺はジムカーナやチョロザンヌ山で走りの特訓さ。バーニング走行に一層磨きがかかったぜ」

どうやら、バラートはひたすら走行練習に打ち込んだようだ。

僕は視線をハセガワ3131に向けた。

「あっ・・・僕はね、デスマッチに出てたんだ」

「デスマッチ?」

「うん、僕の出身の地方ではね、流行りなんだ」

「そもそも、それって何をするのさ」

「ぶつかり合い」

ハセガワ3131は、ただ単純に僕にそう言っただけだった。

僕は、次の言葉を促した。

「僕の取り柄といったら、まだブロックぐらいしかない。まずは、そのブロックの腕を磨こうと思ったんだ。そういう意味では、まさにうってつけの場所だったからね」

なるほど、身を削ってブロックに磨きをかけたわけか。

「じゃあ、アグネス君はどうなのさ」

ハセガワ3131は僕に尋ねてきた。

「僕は、マウンテン・マウンテンに行っていた」

「へぇ、あの高い山だね」

「そう。で、そこで畑仕事をしていたんだ」

「畑仕事?!」

そう突っ込んできたのはバラートだ。

「そんなの、どんな意味があんだよ、おい」

「それがね、意外と足腰を鍛えられるんだ。実際、かなりタフになったしね」

「そうなのか」

「それよりさ、レベル2の敵ってどんな奴だろうね・・・」

僕は2台に聞いた。

こちらはこちらで、また色々話を聞きたかった。

「名前は『ブラウンハンター』『ハイドロチャンプD』『ピース』『グランポール』だな」

「僕、ハイドロチャンプDなら知ってるよ」

ハセガワ3131は、自分からそう言った。

この調子なら、僕から切り出す必要も無いか。

「彼女はね・・・」

「あれ、女性レーサーなの?」

僕は聞いた。

「うん、僕よりいつも『ちょっとだけ』速いんだ。堅牢な走りが特徴」

「それじゃあブラウハンターと同じじゃないか」

「あ、そうそう――」

バラートも入ってきた。

「そのブラウンハンターって野郎、俺と同じボディだったぜ」

「そりゃ奇遇だなぁ」

「まあ、彼は黄土色だから、見間違うことは無いだろうけどな」

「あとは・・・」と僕は続けた。

「――ワザとずっこけて相手を翻弄させる『ピース』に・・・」

「――お前とよく似た走りの『グランポール』だな」

バラートが後を続けた。

僕は、自分の走りがどのようなものなのかいまいち良く分からなかった。

そもそも、客観的に見たことなんて無かったような気がする。

僕は、バラートとハセガワ3131に聞いてみた。

「ねえ、『僕の走り』って、そもそもどんなものなの?」

「えっ?」

「だってさ、自分のことって意外と分からないものでしょ?」

「うん、それも一理あるね。アグネス君はね・・・」

「そうだな、お前はな・・・」

2台とも、少し考えているようだった。

そして、同時に口を開いた。

「臨機応変なオールラウンダーだよ」

「オールラウンダー?」

僕は聞き返した。

どこでもそれなりにこなせて・・・いたっけ?

「おぅ、お前って、どんな状況でも何かとクリアしてるじゃねぇか」

「うん、僕もね、君はどこでも自分なりの走りで攻めていると思う」

「・・・でも、僕とグランポールの走りが似ていると問題あるのかな」

「大アリに決まってんだろ。分からないのか?」

僕は考えたが、分からなかった。

「要するにだな、互いの手の内が見え見えなんだよ」

「・・・あっ」

僕は少しだけピンときた。

「さっ、そろそろ休もうぜ。明日が明日なんだし」

「そうだね、僕も休ませてもらうよ・・・」

バラートとハセガワ3131は個室に戻ろうとした。

「ぁ・・・待って」

僕は、思わず引き止めてしまった。

なんでだろう、とにかく、一人になりたくなかったのかも。

「どうしたんだ?」

バラートが聞いた。

僕は引き止めてはみたものの、特に用事なんて無かった。

ああ、どうしよう、言葉が出てこない・・・

・・・

・・・あっ、そういえば――

「あ、あのさ・・・」

「?」

「明日のレースが終わったら、一度家に来てみないか?」

一度、レース以外でも2台と一緒に話がしたいと思っていたのを思い出した。

暇があるとすれば、レベル別レースが始まる前までじゃないかと思ったんだ。

2台は、特に抵抗を感じていないようで、むしろ受け入れてくれた。

「いいな、行こうぜ」

「楽しみだな♪どんなところだろう」

「うん、楽しみにしてて。じゃあ、また明日」

僕らはそれぞえ個室に入り、明日のレベル入れ替え戦に備えて休みを取った。

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