Chapter11(5/6ページ目)
すろーらいふと港の生活、そして用事(後)
僕はカウンターを越え、厨房の脇を通り過ぎ、奥の一室に案内された。
「さあ、入れよ」
「うん、ありがと」
僕はドアを開けて中に入った。
部屋の中はキレイに整頓されていた。
寝床があって、テーブルの上には書類が沢山ある。
きっと、お店の業績やら何やらだろう。
壁には何枚かの写真が飾られていた。
殆どはアンブレラポートで撮ったものらしいが、その中に家族の写真を見つけた。
それは写真が沢山ある中でも、中央の目立つ場所に貼られている。
僕と兄さん、母さん、そして、今は旅に出ている父さん・・・
まだ若いのに、懐古の気持ちが湧いてきた・・・
「どうだ、いい部屋だろう」
兄さんが聞いてきた。
「うん、すごい・・・素敵だよ。でも、なんでこんな所に?」
「うん、じゃあ、話してやるか。実はな、俺はもっとすごいところに行きたかった。例えば――そうだな――クラスクシティのマンションとか」
「うん。それ、分かる。僕、クラスクシティに行ったことさえない」
「だよな。俺も一度行ってみたいけど、でもな――あの街って性に合わない気がするんだ。いつも忙しそうにセカセカしていつイメージがある。俺は縛られるのが嫌いだ――」
兄さんはクラスクシティに住みたかったのか。
でも、性には合わない・・・兄さんはマイペースだもんね・・・
「――それで、他のところに住みざるを得なくなった。家には帰れるはずがねえ。あんな捨てゼリフを残しちまったからな。世界一どころか、街一番にもなっていない。
それで俺は途方に暮れた・・・放浪した・・・そして、居心地のいい場所を見つけた・・・」
「それが、ここ・・・なんだね」
兄さんは無言で頷いた。
「行き先を失った俺にとって、こういったたまり場はピッタリの場所だったんだ。それからはココに通う毎日さ・・・いつしか、ここの常連になった。俺は、みんなと色々話したものだ。世界のこととか、色々な・・・」
・・・。
「でも、なんだか違うような気がした。なんで、裏社会で生きなくちゃいけないんだ?俺は世界一になりたいのに、裏社会で根を伸ばしても大して意味は無い。やるなら、表に出なくてはいけない。
他のみんなも、表じゃ悪いことばかりしているけど根はいいやつらなんだ。俺は、そういうやつらがここで燻っているのを黙ってみているのは辛かった。応援してやりたかった」
「でも、それなら尚のことこのお店から出るべきだったんじゃない?」
「聞き逃したのか? 俺は、他のやつらも再復帰させたかったんだ。いつまでもこんなところにいちゃいけないって。俺はみんなにそう言った。そしたら、みんなも本心では戻りたいと言っていたんだ」
兄さんの顔は少しずつ輝いていった。
「それで、前の店主にもそう言った。そしたら、『アンタはバカじゃないか』と言われた」
そりゃそうだ、普通はそうなるよね。
「でも、手紙を出す前の日、俺に転機が訪れた・・・決して嬉しいことばかりではないけどな」
「転機?」
「ああ、まず、いい知らせだ。俺は、ここの店主になった。そして、もう一つ悪い知らせ・・・」
「?」
「・・・前の店主が誘拐された」
・・・え? 誘拐?
でも、表で悪いことをしているやつらの集まる場所の店主が誘拐されるなんて・・・
「俺は彼に恩恵を感じていた。放浪していた俺を快く引き入れてくれたからな。だから、これにはショックだった。次の日にみんなに聞いたが、誰も答えなかった」
そうか・・・。
それはショックだろう、自分の師匠がいなくなったようなものだ。
「で、店主と一番仲の良かった俺が今の店主になったんだ。それからは、みんなを自立させるように頑張っているんだ。知ってるか? 今はここに来るやつらも悪いことをあまりしなくなっているんだ」
「そうなの? でも、町の人の評判は悪かったよ・・・?」
「まあ、先入観は抜けないものだからな。仕方ないさ・・・」
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最終更新日(11.04.21)
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