Chapter11(4/6ページ目)
すろーらいふと港の生活、そして用事(後)

途中で道に迷いながらも、何とかあのカフェの前に着いた。

お店のほうはやっぱり閉まっているけど、上の階は電気がついている。

もしかしたら、まだあのチョロQさんが起きているかも。

こんな時間に行くのは気が引けるけど、仕方ないか。

僕はお店の入口の横に付いているブザーを押した。

「はぁーいっ、今行きマース」

上から聞き覚えのある声が聞こえて、間もなくエンジン音が近づいてきた。

ドアはガチャと開いて、さっきの店員さんが顔を覗かせた。

「あぁ、やっぱり。来ると思ったわ」

「え? 何で分かったんですか・・・?」

「だって、あなた、すごく落ち込んでいたわよ。きっと、泊まる所が無いんだろうな、って思ったの。もしかして、当たってる?」

みんな図星だった。

「はい、そうです。いいんですか?」

「ええ、勿論よ。この街は、夜に歩くと危ないからね。さあ、上がって」

僕は中に入れてもらった。

彼女はドアのカギを目に見えないほどの早業で閉め、後から付いてきた。

ドアを入るとすぐにエレベーターがあって、そこに案内された。

「うわぁ、すごい。家の中にエレベーターだなんて。僕の家なんかスロープだけ・・・」

「あら、いいじゃない。これ、壊れたら大変なことになるのよ。今思うと、スロープのほうが良かった気がする。でも、将来を考えるとねぇ・・・スロープじゃ登るのも大変になるでしょ? だからコレにしたのよ」

「なるほどね・・・うわぁ! すごい!」

エレベーターで部屋に上がると、目の前に大きな窓があり、そこからはライトアップされた港町が見えた。

「いつもこんないい景色を見ているんですか?」

「ええ、っていうか、これがいい景色っていうのならばね。もう飽きたわ」

「ふぅ〜ん・・・ところで、どこで寝ればいいのでしょう?」

「あっ、そうねぇ・・・」

彼女は部屋をきょろきょろと見回した。

部屋にはベッドが一つ、ソファーが一組、他の家具も一通り揃っていて、まさに女性の独り暮らしと言った感じだ。

「・・・じゃあ、あそこのソファーの上でもいいかしら? あそこなら柔らかいし、きっと良く眠れると思うわ」

「はぁーい、ありがとうございます。すみませんが、ちょっと疲れちゃったので・・・」

「あ――うん、先に寝ててもいいわ。おやすみなさい――」

その後のことは覚えていない。

ただ、いつもの『あの夢』を見ることはなかった。

気付いたときには、もう朝になっていた。

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最終更新日(11.04.21)
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