Chapter18(2/4ページ目)
北の研究所
そこは北半球、この季節はそれなりに寒い。
コルテックスは外套をはおり、冷たい風の吹く港に足を下ろした。
辺りを見渡すと、なんだか寂しい。
小さな湊町にあるような、こじんまりした漁港。
そろそろ昼時だから、漁船はとっくに漁から戻り、市場も終わっている。
とにかく殺風景だ。
「ああぁ、寒さが芯まで突き刺さってうくるな・・・」
陸の乗り物を持ってこなかったのは失敗だった。
何か良いものを見つけて、目的地に急ぎたい。
市場の建物の陰に行こうとしたとき、一段と強い風が海から吹いてきた。
コルテックスは外套をキュッとしめ、陰へと急いだ。
「ふぅ、こんなに寒いとたまらんわい、、、」
陰に着くなりコルテックスはこぼした。
誰だって、極端な気候は好きじゃない。
コルテックスは辺りをキョロキョロした。
すると。
「・・・おっ、あれは――」
古い日本の車だ。
結構前に輸入して、ずっと使っているのだろう、荷台の斑点のようなサビがそれを物語っている。
潮風が吹き付けるから、塗装が徐々に剥げてくるのだ。
それは、トラックタイプの黄色い三輪車。
なるほど、小さい港なら、こういった小さなトラックのほうが足が良く回るだろう。
「よし、それじゃあ・・・ちょっくら拝借させてもらおうか」
馬力は高くなさそうだが、何も手段が無い今は使わない手なんて無い。
有り難く使わせてもらうことにした。
中を覗くと、結構狭い。
三輪トラックの持ち主が自分で取り付けたらしい暖房が、操縦室のスペースの殆どを占拠している。
デカい頭がドアのところで突っかかる――何とか入れた。
コルテックスは万能カギでエンジンをかけてみた。
・・・。
・・・。
「あれっ、おかしいな・・・」
もう一度、またもう一度。
・・・。
・・・。
ダメだ。
「こりゃ・・・キーのシリアルが必要だってことか?」
どうも、オリジナルのキーでしか反応してくれないらしい。
古いが、日本車だけあってセキュリティはしっかりしている。
「だがっ! 悪の天才の天才にかかれば、こんなもの――」
おや、どうするんですか、天才を二つも重ねて。
「黙ってろ! 見ておれ、ここをこーしてあーして・・・」
クラッシュにさえ勝てないコルテックスは、セキュリティをどんどん解除していく。
まるで魔法のようだ。
「おい、さっきから癪にさわることばかり言って、何様のつもりだ?イライラして集中できん」
それは失礼、ではしばらく毒っ気は抜きましょう。
さて、コルテックスはものの数分でエンジンをかけることに成功した。
とりあえず暖房を付ける。
凍えた身体に温もりが当たる。
寒い地方だから、少しエンジンを暖めないといけない。
馬力の低いトラックだから尚更だ。
コルテックスはニュートラルでエンジンを吹かしながら遊び、暖まるまでの時間を潰した。
「♪ブ〜イブイ飛ばすぜぃ〜、三輪トラックにぃ〜乗おってぇ〜〜〜」
変な歌を歌っているうちに、エンジンも調子良くなってきた。
「さぁ、行くぞ、待ってろよ」
アクセルを踏んだ。
三輪トラックはゆっくりと動き始めた。
心なしか動きに不安があるけど、歩くよりはずっとマシだ。
寒いし時間はかかるし、そんな歩きに比べたらずっと楽だ。
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最終更新日(11.08.31)
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