Chapter16(4/5ページ目)
ブリオの化学研究
ブリオは、常に誰かの影に――安泰になるような影に――身を置く。
ずっと昔、ブリオはコルテックスと、共通の野望を持つもの同士で手を組んでいた。
とは言っても、対等の関係ではなく、寧ろこき使われるような印象ではあったが。
ところが、ブリオはあるとき、コルテックスとの同盟(?)を断ち切ったのだ。
そのきっかけを作り出したのが、他でもない、クラッシュであった。
コルテックスは焦っていたせいで、洗脳装置が不完全なまま、クラッシュに洗脳を浴びせてしまった。
これが、コルテックス博士の人生で一番の失敗に違いないだろう。
クラッシュは命からがら逃げ出し――実際には命ではなく、意識(自我)を奪われそうになったのだが――そして・・・
「クラッシュさんは恋人を助け出すために戻ってきたのです! なんと感動的な話ではないですか、ねぇ?」
ブリオは一人妄想に浸かっている。
「もしもーし」
ニーナがイライラしながらブリオに呼び掛けた。
「はぃ?」
「いつになったら、その薬は完成するのよ、さっきからずっと脱線してるじゃない」
「あっ、・・・えぇ、そうですね・・・少し脱線し過ぎたかもしれません、そろそろ最後の段階に取りかかりましょう」
ブリオは棚から温度計を持ってきた。
そして、先程の黒い液体を軽く混ぜながら温度を測る。
「?」
「この薬品は、混ぜていくとどんどん発熱します」
混ぜている間にも、温度計はどんどん高い値を示していく。
「するとですね・・・」
液体は、段々粘りっこくなってきたようだ。
はじめはかきまぜるガラス棒に合わせて液体が波を立てて踊っていたが、今は疲れたようにドロドロになっている。
材質というか、成分が変化しているようだ。
変わらないのは、黒いということぐらいか。
まるで、小さなタール坑だ。
「・・・ふぅ、この辺ですかね・・・」
ブリオはかき混ぜるのを止めた。
「ちょっと、それを取ってくれませんかね――褐色瓶の横の――そう、それです――これを加えましょう・・・」
ブリオは、ニーナに取らせた白い粉状のものを加えた。
なんとなく、ブリオが童話の魔女とか、魔法使いのように見える。
ひ弱な魔法使い。
魔法の粉・・・ではなく、白い粉末を加えた。
すると、大鍋・・・ではなく、フラスコの中の液体はゴボゴボと鈍い音を出しながら泡を立て始めた。
そして化学の魔法使いは笑う。
「さあ、これが冷めればいよいよ完成ですよ、ヒェッヒェッヒェッ・・・」
「その笑い方はやめて!」
・・・。
・・・。
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最終更新日(11.04.13)
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