Chapter16(3/5ページ目)
ブリオの化学研究
・・・。
「さあ、そろそろお話はやめにしましょう。そこのデビルさん・・・」
スウィーティは、報酬をもらいたくてずっとそこにいたのだ。
というより、もらえなかったらブリオを傷つけるつもりでいた。
この実験が出来たのは自分のお陰なのだ。
ご褒美が何もないことは考えられなかった。
スウィーティは待ってましたとばかりにブリオに歩み寄った。
ブリオは、緑の白衣の懐から封筒を取り出した。
「ほれ、これをあげるから出ていきなさい」
「・・・ありがと・・・」
スウィーティは、「なんか釈然としないなぁ」とか思いながら封筒を受け取った。
期待通りのはずだけど、なんかすっきりしない。
「報酬ってこれだけ?」
「何か不満でも?」
「だってさー、そもそもアイツを捕まえたのは私のお陰なんだからね」
「・・・」
「この良く分からない実験も実現しなかったんだから・・・」
「ただ、まだ完全に終えたわけでもありませんしねぇ・・・実際に結果を残したら、そのときは考えましょう」
「――すっぽかしたら、覚えてなさいよね」
「ヒッ・・・お、脅しなんかでビビるワタクシなんかじゃ無いです・・・ょ」
思いっきりビビっている。
スウィーティはそのままラボを出ていった。
ブリオは内心ホッとしながらニーナのところに戻った。
「さて・・・そろそろ始めますよ、ヒェッヒェッヒェッ・・・」
ブリオの笑いの奇妙さは特筆ものだ。
「ブリオ、アイツは敢えて外に出したの?」
ニーナはブリオに尋ねた。
ブリオは少しキョトンとしたようにニーナのほうを向いた。
「えっ?」
「いや、だってさ・・・このタイミングで外に出すなら、何かしら訳があるでしょ」
「ただ怖かったから出しただけですよ・・・これで満足出来ましたか」
ブリオは若干イライラしているようだ。
「ブリオ、あの子はあまりほったらかしにすべきじゃないからね」
「はいっ?」
「あの子はあんたにイライラしてるよ」
「何でそんなこと思うんです?」
「そうね、自分の都合が良くなるほうに動いている、って言えばいいかな」
「・・・なら、早いとこ計画を進めましょう」
ブリオは黒い薬品を取り上げ、実験台の元に向かおうとした。
「そういえば、なんであなたまでワタクシのラボに?」
ブリオがそう聞くと、ニーナは若干間を置いて答えた。
「――おじさんに愛想尽きちゃったからよ、なんか文句でもあんの?」
「べっ、別にそんなこと・・・」
ブリオはタジタジとうろたえる。
「大体、おじさんは考えが古いの。だからいつまで経っても野望が叶わないのよ」
「あなたも自分の状況が良くなる方向に『逃げ』ますよね」
ブリオはニーナにそう言った。
「――あんたもね」
ニーナは言い返す。
「あっ、悪の科学者はですねぇ、ルールなんて気にしないのですっ!」
「・・・」
ブリオは反論した。
顔には珍しく赤みが差している。
「・・・ということは――」
ニーナは間を置いて言葉を続ける。
彼女の表情は、共通の心境を持つもの同士の、あの興奮したような感じになっている。
「――あたいは着実に悪の道を進んでいる、って訳ね」
「まぁ、そうとも言えましょうね、えぇ」
ブリオの返事はそっけない。
どうでもいいと感じているか、もしくは恐れているか、あるいは見下しているのか。
ブリオに関しては、見下すなんてことは殆ど無いと思う。
そうでなかったら、つまり見下すなんてことはしないのだから、自分の力だけで世界征服をしようなんて思いもしないのが当然だろう。
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最終更新日(11.04.13)
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