Chapter12(3/4ページ目)
洗脳が解けた・・・?
ココは奥の部屋に行き、間もなく戻ってきた。
片手に、小さなピンク色のものを握っている。
「あっ――」
クラッシュはすぐに気が付いた。
紛れもなく、それはクランチのチビクマちゃんだった。
(そうか、だから探しても見つからなかったのか)
「あのときに急いで準備していたから、これが紛れ込んでいることに気が付かなかったの――ゴタゴタの原因になるなんてね・・・」
ココの声は尻切れトンボに消えた。
「っていうか、なんでココが持っていたの?クランチと同じ部屋にいるわけじゃないだろ」
「あー・・・それは――何でもない」
「ふーん――」
クラッシュは、ココが必死に顔の赤みを隠そうとしていることに気が付いた。
「あっ、信じていないでしょ」
「信じてるよ」
「だったら、なんでそんな顔で私のことを見るの?」
「『そんな顔』ってどんな顔だよ」
「だって、絶対に『シラ〜ッ』って感じの顔で見てきた!」
「あのー」
ジャッキーが唐突に割り込んできた。
クラッシュとココは、顔を赤く染めながら、今にも兄妹ゲンカをはじめてしまいそうな雰囲気だった。
ジャッキーは気まずいと思いながらも、同時にこの言い争いを止めないといけない、と思った。
きっと、クラッシュは怪我だけでは済まないかもしれない。
「・・・そんなことしている場合なの?」
「・・・」
「・・・そうね、続きはまた今度にしましょう――」
「続き?もうやめにしよう――」
クラッシュは疲れたように言った。
「『やめにしよう』って、元々、変な顔で私を見たのはそっちでしょ」
「だって、それはお前が――」
「もう聞きたくないよ!」
ジャッキーが怒りながら二人の間に割り込んだ。
こんなことをしていたら、あっという間に日が暮れるし、時間がもったいない。
「クラッシュ、元々はどうしてここに来たのか思い出してよ! 助けをもらうためだろ・・・」
ジャッキーは訴えた。
「・・・なんだっけ、それ」
クラッシュは忘れているみたい。
「ココに助けをもらうためだってば。クランチを探すって自分で言ったのに――」
「あれ、そうだっけ」
「ほら、もうケンカはおしまい!」
ジャッキーが言うと、クラッシュとココは口をつぐんだ。
ちょっとばかし気まずい雰囲気だった。
でも、またすぐに二人の口が爆発するようなことは無さそうだ。
「よし――とりあえず、ここは身を引こう。じゃあ、助けてよ、ココ」
「今更ねぇ――何をすれば・・・?」
「クランチの居場所が分かればそれでいいから」
クラッシュは最後に「会いたくないし」と、ボソッと付け足した。
「はいはい、そういう意地は要らないから。・・・これで探してみれば?」
ココは、小さなレーダー探知機のようなものをクラッシュに手渡した。
「まずテストしてみようか。私の名前をそれに入れてちょうだい」
「うん――ココ・バンディクー・・・っと――これでいいの?」
「大丈夫、それじゃ、次に赤いボタンを押してみて」
ポチッ。
クラッシュがボタンを押すと、ピッという音が鳴り、画面に世界地図が現れた。
その中で一ヶ所、赤の点滅があるのを見つけた。
「これ、どこを指しているのさ。世界地図なんて、サッパリ分からない――」
「シカゴだってば」
「ふーん・・・で?」
「『で?』って何?」
ココは逆に質問した。
「だって、これじゃシカゴのどこにいるか分からないよ」
クラッシュは微妙に困ったような声で言った。
ココは「世話が焼ける」とも言いそうな顔をしながら話を続ける。
「幾つかボタンがあるでしょ。何のためについているのか考えてみたらどう?」
「う〜ん・・・」
・・・。
・・・。
(そんなに考え込むの?)
ココは前言撤回、「もう考えなくていいからっ」と遮るように言った。
ココは赤いボタンの横についている、黄色の矢印ボタンを指した。
ああ、と納得したクラッシュはそのボタンを押した。
「どんどん押してみて」
何回も押すと、地図は拡大され、シカゴのエリアマップのようになった。
「これならいくらか分かる・・・かな」
「そう、良かった。――あ、そうだ・・・」
ココは、ふと思い出したように切り出した。
クラッシュは感心しているのかどうか分からないが、機械をジロジロを眺めている。
「・・・これを使える回数は限られているの。この機械、プライバシーの問題が絡んできたりするから・・・」
「まぁ、そんな使うわけじゃないから大丈夫」
「あと、もう一つ――」
ココはさらに続ける。
「タウナのストーカーなんかの為に使っちゃダメよ」
「なんでそうなるんだよ、ひどい言いがかりだ・・・」
クラッシュは憤慨した。
まだ何にも言っていないのに、こんなことを言われたら腹が立ってくる。
ジャッキーに「まぁまぁ、落ち着いて・・・」となだめられながら、クラッシュはボソッと言葉をこぼした。
「まずはタウナから追っかけてやる――」
クラッシュをなだめていたジャッキーには、この言葉が聞こえてきて、思わず苦笑いした。
運良く、ココにこの言葉を聞かれることは無かった。
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最終更新日(10.06.01)
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