Chapter12(2/4ページ目)
洗脳が解けた・・・?

爽やかな色合いの部屋の中。

そのリゾート地のような場所でプルル・・・と電話が鳴った。

内線だ。

ココは受話器を取って、受付嬢の用件を聞いた。

「はぁ――なるほどね。忙しいって言ったんだけどな・・・まあいいわ、通しても」

「お連れになっている者もお通しして・・・?」

「ええ、いいわ」

「では――」

「うん、お疲れさま」

ココは内線を切った。

窓辺から海岸を見ると、ずっと向こうに、いつか見た飛行機とグライダーが停めてあるのが見えた。

(そう言えば、連れって誰だろう。クランチだと思っていたけど、あれには乗れないだろうし・・・)

ココは不思議がっていると、ドアのすぐ向こうに答えがやって来た。

トン、トン。

丁寧にノックを叩く音がする。

(・・・お兄ちゃん、だよね――)

一瞬だけ躊躇した後、ココは「どうぞ」と呼びかけた。

ドアをバタンと開けてクラッシュが嬉しそうに入ってきた。

ココは、やれやれと思いつつも、顔を見せてくれる兄が少し嬉しく感じた。

次の『付き添いの者』が入ってくるまでは。

ジャッキーの姿が見えた途端に、ココの表情が豹変――というより、汚いものを見るような顔になった。

それからは一瞬だった。

ココは素早くデスクから銃らしきものを二人に向け、どちらも口を利く前に銃口から何かを二発発砲した。

捕獲ネットだ。

特殊な繊維を使用しているのか、ジャッキーが背中の針を逆立てても全く効果は無かった。

捕獲ネットはクラッシュとジャッキー、それぞれにかけられていた。

そして、ココがゆっくりと近付いてくる・・・。

「ココ――」

クラッシュは哀願するような声で呼んだ。

でも、ココは聞こえなかったフリをしたようだ。

ココはジャッキーの方ではなく、クラッシュの方に近付いた。

そして――

「ココより――」

右足を踏ん張って――

「――何を――」

「愛を――」

左足を後ろに振り上げ――

「――するん・・・!」

「込めてぇっ!」

痛烈なカラテキックがクラッシュを直撃!

クラッシュは驚きと痛みの声を同時に上げた。

「うぅっ、何で――?」

「化けの皮を剥がしなさい、コルテックス!」

ココは全く怯む様子もなく、クラッシュを傷めつけた。

「なんで――」

ベシッ。

「あのジャッキーと――」

バキッ。

「一緒なのよ――」

ゴキッ。

「敵の罠に違いない――!!」

「違う、待って・・・待てって!」

ココは一旦攻撃を止めた。

警戒の縄はまだほどけていない。

「ジャッキーは改心したんだ。洗脳が解けたみたい」

ココは何も言わずに、今度は棒のような物を持ってきた。

「じゃあ、あなたは本当のお兄ちゃんね?」

「勿論さ!」

棒に丸い緑色のランプが光り、ポーン、と音が鳴った。

今度はジャッキーの元に向かう。

「あなたはコルテックスの元にいたいの?」

「そんなの、真っ平だ」

また、緑色の丸が光ってポーン、と音が鳴った。

ココはゆっくりと立ち上がり、二人をもう一度見た。

クラッシュは、ココが苦悶の表情を浮かべるのを久々に見たような気がした。

そしてココは、銃とウソ発見器を置いて、二人を解放した。

「・・・ごめん。ジャッキーと一緒だったから、もしかして――と思って」

ココは小さくなりながらクラッシュにボソボソと言った。

「まぁ、疑いがなくなったのは分かったけど・・・」

クラッシュは自分の体を見た。

「これじゃ外を歩けないよ」

「大丈夫、救急箱と毛並みを整えるスムーサーならあるから――」

「――それより、教えて欲しいんだけど、なんでジャッキーの洗脳が解けちゃったの?」

ココはジャッキーを見ながら聞いた。

「オイラには分からない。ここに着いたときからおかしいんだ」

「ボクもさっぱり。でも、何だか記憶がスッポリ抜けた感じ」

ジャッキーがこう答えると、ココは考えながら言った。

「・・・クランチは洗脳されていたときの記憶もあったわよね。辛そうだったけど、克明に話してくれた。でも、ジャッキーは何も覚えていないって・・・」

「多分、ショックの与え方が違っていたから、こうなったんじゃないかな」

クラッシュは珍しく的の射た考えを言った。

「なるほど、そういうことは十分有り得るわ。ところで、詳しく聞かせてちょうだい。今まで何があったか」

ココは納得した様子で、二人から(ジャッキーは殆ど記憶が無かったから、大部分はクラッシュから聞いた)経緯を聞いた。

クラッシュはまだ意地を張っていて、クランチのことは一度も口にしなかった。

ココは気になっていたからだろうか、クランチのことを聞いてみた。

「――ところで、クランチは家に残してきたの?てっきり、クランチと一緒なのかと思ってた」

クラッシュはその質問を無視した。

「・・・?――あっ・・・ケンカでもしたの?」

「だって、アイツったらピンクのチビクマちゃんのことしか頭にないんだ。向こうは家を出ていったよ」

「ええっ!?どうしよう・・・」

ココはかなりショックな顔になった。

「いいよ、向こうから謝るのを待つ。オイラは何も悪くない」

クラッシュが頑なな顔でこう言うと、ココは首を軽く横に振った。

「ううん、クランチのことじゃなくて、ケンカのこと――」

「それがどうしたんだよ・・・」

「――ケンカの原因を作ったの、きっと私だわ・・・」

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