Chapter10(4/6ページ目)
シカゴへ

「おじさん、おじさん・・・」

外から呼ぶ声が聞こえてくる。

コルテックスは、その声で目を覚ました。

「んー・・・誰だ?こんなとこまで追っかけてきやがって・・・ふぅぁあぁあ〜・・・」

大きなあくびを殺しながら起き上がる。

なんだか頭が重たく、そして痛かった。

いや、重いのはいつものことだけど、いつもより辛かった。

潜水艦の中にいたせいだろうか。

潜水艦の頭はサメのように海の上から頭を出し、波に揺られて静かに佇んでいた。

なんだか、一人になってからやり甲斐みたいなものを失ってしまった感じだ。

「おじさんってば!いるでしょ!?」

「?!?――ニーナ・・・?」

「そうよ、あたい!開けてくれる?こっちは寒いんだ・・・」

「おお、それは済まなかった・・・」

コルテックスはハッチの二重扉に向かった。

(あれ?なんで二重扉の向こう側の声が聞こえたんだ?まあいいか・・・)

不思議に思いつつ、重く分厚い扉をヨイショと押そうとした。

エヌ・ジンの技術の塊はここでも生きていた。

扉の重量は物凄いハズなのに、少しの力で開くようになっていた!

拍子抜けしたコルテックスは見事にずっこけた。

「ぉわ〜、こりゃ驚いたなあー」

「大丈夫、おじさん・・・?」

ニーナがおじさんを気遣う。

「ああ、大丈夫さ、これくらい――もう慣れとるわい」

「・・・そう・・・」

「ところで、なんでここに?」

「あれ、嬉しくないの?」

「いや、そんなことはないさ。来てくれて嬉しいよ」

確かに、来てくれたのはすごい嬉しい。

一人でずっと塞ぎ込んでいるのは退屈で仕方がなかった。

そんなときに、ニーナが来てくれた。

でも・・・。

「さっ、おじさんの質問にはまだ答えていないぞ、ニーナ」

「別に用事は無いけど?」

「はっ?」

「いや、だからヒマだから来ただけ。用事は無いよ」

「そうか、アハハ・・・」

(何か嘘をついているような――まあいい、姪っ子を疑うのは良くないよな)

博士は疑るのをやめたが、それでも自分の言いつけを守らなかったことはちょっと気に入らなかったようだ。

「あのな・・・ワシはおとなしく待っていろって言っただろう?外は危ないし、お前はまだ小さい・・・」

すっかり気の大きくなった姪っ子とはいえ、一人歩きさせるにはまだ早すぎる。

なのに、最近は自分からあちこち探ったり出ていったり、ちょっと心配だ。

まあ、それだけ悪の心が育ってきている証拠かもしれないな。

「とにかく、何をしに来たのか教えてくれないか、ここには何もないのに」

ニーナは叔父の心の奥を探るように目を細めた。

「あたい、邪魔なの?折角、助けに来たのに・・・」

「あ・・・いや、そんなつもりで言ってはいないが」

コルテックスはアワアワした。

ニーナはさらに突き放すように言った。

「でも、目がそう言ってる」

「ワシはポーカーフェイスの達人なんだぞ」

「そうなの?聞いたこと無いけど・・・だったらさ、わざわざ胡散臭そうな目をしなくて良かったのに・・・」

ニーナはちょっとばかししょげながら言った。

「ハッハッハ、そりゃすまんな。誤解させてしまって」

「んもう、まったく」

二人は潜水艦の機関室に落ち着き、さらに話は続く。

「あたいねー、もう縛られるのはイヤだ」

「なんだ、藪から棒に――でもないか。まあ、確かにお前も大きくなったけどな」

「ねぇ、もういいでしょ、おじさん」

「いや、このことについてはまだ譲れん。大きくなったからって、まだ10だろう?」

「あたい、この前のテストでトップだったんだけど」

「う・・・うむ、別に忘れていた訳じゃ無いが・・・」

「ああ、もう。おじさん、焦れったい」

ニーナはあの手この手で叔父をやり込めようとしたが、上手くいかない。

「あのな、ニーナ――私をそうやって騙せるはずがないだろうが。私がお前を育てたようなものだ。手は大体読めとるわい」

ニーナもまだ引っ込まない。

「そう・・・あたいはおじさんを信じているわ」

「それじゃあ、最後通告だ」

「・・・」

「――研究所に戻るんだ」

一瞬の空白。

「・・・分かったわ、ウン・・・そうね・・・」

ニーナは叔父から顔を背けた。

もしかしたら、泣いているのかもしれない。

もしかしたら、拗ねているのかもしれない。

本当のところはどちらなのか分からないが、そのうつむいた姿はどこか寂しさを感じさせる。

「ニーナ、すまないが今回は本気なんだ」

「あたいも本気よ。あたいはおじさんの・・・」

「だがな、お前はまだ学生だろう?若すぎる。あまり見せたくないものもあるからな・・・」

「はぁ?なんのこと?」

「とにかく、お前は研究所でおとなしくしていてくれ。お前が心配で集中できなくなる」

「あっ、ごめん・・・」

ニーナは少し間を置いてからまた口を開いた。

「分かった。研究所でおとなしくしているわ。おじさんの邪魔は出来ないよ」

ニーナは、叔父に表情を見せないようにしている。

「ああ、すまないな・・・本当は近くにいて欲しいんだが、計画の中身が中身だ・・・」

島の自然の一部を吹き飛ばすところなんて、まだ学生の姪っ子に見せられない、というよりむごすぎて見せたくない。

きっと、その辺の小動物も、植物も、地面も、死に絶えるだろう。

それを知ったら、ニーナはひどく悲しむに決まっている。

(ニーナ、済まない・・・)

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