Chapter10(2/6ページ目)
シカゴへ

一方クランチは、森の中を一人トボトボと歩いていた。

「あ〜あ、なんで飛び出してきちゃったんだろ・・・」

独り言を呟く背中は曲がっている。

あのときは感傷的になりすぎて、自制心が無くなっていた。

ただ、昔の自分に戻ることが無かっただけマシだったかもしれない。

「いや、あれは悪夢だ・・・考えたくない・・・」

コルテックスに遣われていたとき。


『・・・』

・・・。

・・・?

・・・あれ?

(なんで・・・急に自分を感じるように・・・)

周りは水で満たされ――いや、水なのかは分からない。液体なのは確か――そして沢山の訝しげな機械。

なんでこんなところにいるんだ?

何をしているんだ?

どうなってんだ?

どうすれば逃げられる?

っていうか、何で急に考えるようになったんだ?

その問いに即座に答えるように、向こうから光が漏れる。

喋り声と、それからシルエットが見えてくる。

『おい、見るな、エヌ・トロピー!まだデリケートな段階だ、それに入口を見ろ!』

―ワシ以外立入禁止―

エヌ・トロピーは目と鼻の先でドアをピシャリと閉められ、憤りの声を上げる。

(・・・ん?アイツは・・・)

そのシルエットは、真っ直ぐ自分のところに向かってくる。

チンチクリンのくせに、頭は異常にデカい。

ソイツは目の前で止まり、何やら傍らにある機械を動かし始めた。

体と繋がっているチューブから何かが伝わってくるのを感じた。

頭に繋げられたチューブの影響は計り知れなかった。

とにかくムカムカ感が伝わってきて、今まで考えていたことがどうでもよくなってきた。

代わりに、違う思考が頭の中にインプットされていくようだった。

『・・・ッハ――クラッシュ・・・バンディクー・・・』

『フハハハハ、これで――』

――。

――。


「うぅっ!これ以上は思い出したくねぇよ・・・」

クランチは生気の無い声で呟いた。

ちぇ、今日は何もかもツイてないぜ・・・。

そんなことを思いながら、一歩一歩進み続ける。

「今更になって戻るのもかっこ悪ぃしよぉー・・・うーん――」

海の方向から、熱いそよ風が吹いてきた。

色々な匂いが混じっていた、好きなものも、嫌いなものも。

「そうだ――」

クランチは島の中心に向かっていたが、急に戻りだした。

地面の草を踏む音は力強かった。

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最終更新日(10.06.01)
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