Chapter10(1/6ページ目)
シカゴへ

クラッシュとジャッキーは、家の裏にある倉庫に向かった。

「よしっ。じゃあ、ジャックはどうしようか・・・オイラはオレンジバロンで行くけど、あれは一人乗りだし・・・」

クラッシュはブツブツ言いながら倉庫を開けた。

中にはオレンジバロン、CRローダー、サーフボード、ココマリンなど、懐かしいものがたくさん入っている。

「う〜ん、CRグライダーかサーフボードだな――ジャック、どっちがいい?」

ジャッキーはかなり迷った。

元々ハリモグラだから、水に濡れるなんて嫌だった。

それが海水となると、死活問題にもなりかねない。

大体、シカゴまでサーフボードなんて冗談じゃない。

選択肢は一つしかなかった。

「グライダーにするじょー」

「んー、そう。じゃあ、オイラのオレンジバロンの後に付いてきてくれよ」

そのままクラッシュはオレンジバロンに乗り込んで、エンジンをかけた。

プロペラがゆっくりと動き出す。

そして間もなく高速で回転しだした。

もういつでも出発OKだ。

ジャッキーは慌ててグライダーに乗り込みながら聞いた。

「ちょ・・・どうやって操縦すればいいか知らないじょー!」

「大丈夫さ。自然と慣れるって」

「でも・・・」

「よしっ、テイクオフ!」

「ボクちんの話も聞いてくれだじょ・・・」

オレンジバロンがゆっくりと動きだし、後からグライダーもゆっくりと付いてくる。

それからは一気に飛び立った。

オレンジバロンは悠々と、CRグライダーは優雅に風に乗りながら進む。

ジャッキーはふと下を見てみた。

地面は消え、ただっ広い大海原が遥か下で波揺れていた。

「こりゃ、失敗したら一貫の終わりだじょ・・・」

「なぁ、簡単だろう?どうぞ」

無線機からクラッシュの声が聞こえてきた。

明らかにジャッキーは楽しんでいると思っている。

「アハハ・・・まあ、嫌ではないじょー・・・どうぞ」

ジャッキーは苦笑いをしらがら応答した。

「そう、良かった。しっかり付いてこいよ、どうぞ」

「分かってるじょ、どうぞー――なんでこんな目に――あ・・・」

ジャッキーは何かに気が付いたらしい。

「クラッシュ――」

少し慌てた様子で呼び掛けた。

「――何か持ってきてたりするのかじょー?どうぞ・・・」

「え?手ぶらだけど?どうぞ」

「バカ〜〜ッッッ!!!」

ジャッキーの声は、無線機だけでなく実際に聞こえてきたに違いない。

「なんだよ、急に、どうぞ」

「だって、だって、シカゴは北半球だじょー、どうぞ・・・」

「へ?」

クラッシュにはどうものみ込めないようだ。

キョトンとするクラッシュに対して、ジャッキーはかなり慌て気味だ。

そうこうしているうちにも、タスマニアの緑はどんどん後方に遠ざかっていく。

「クラッシュ、シカゴがどこにあるのか分かっているかじょー?どうぞ」

「アメリカだろ、オイラでもそれくらい分かるさ、どうぞ」

クラッシュはちょっとバカにしたように言った。

「そうじゃないじょー!シカゴは北半球にあるじょー!どうぞ!」

「どういうこと?どうぞ」

「季節が逆になっているんだじょー!だから、このままシカゴに行ったら凍えちゃうじぇ!どうぞ!」

「そうなの?どうぞ」

「・・・何も言えないじょ・・・」

ジャッキーはクラッシュのアホさ加減に呆れた。

もっとも、出発前に確認をとらなかったジャッキーもちょっと悪いのかもしれないけど。

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最終更新日(10.06.01)
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