Chapter9(5/6ページ目)
チビクマちゃん騒動
その頃、クラッシュの家の中では一騒動が起こっていた。
二人の怒号が飛び交っていた。
「オイラは悪くない!」
「いーや、お前が悪い」
「なんだよ、ただのぬいぐるみが無くなったからって――呆れた」
「あの子は俺の友達だ!」
「ふーん。喋らなくて動かない友達ねえ・・・なんか寂しい――」
「っ!・・・お前がそんなことを言うなんて思っても見なかった・・・」
「こっちこそ、さ・・・」
クラッシュとクランチは、互いにそっぽを向いてしまった。
ジャッキーは、一人気まずそうにそこに立っていた。
(どうしよう・・・何かしたほうがいいのかじょ?)
ジャッキーにとってクラッシュ達は敵な訳だし、敵が仲間割れしていれば都合がいい。
でも――
「このまま見ていていいのかな・・・?」
考えがぐらついてきた。
ジャッキーは少し考えていたが、すぐに答えを要求されることになった。
「おい、ジャック」
クランチがジャッキーを呼んだのだ。
とても小さく、囁くように呼び掛けた。
クラッシュは、聞こえたのか聞こえなかったのか皆目分からなかったが、多分聞こえないフリをしているのだろう、そっぽを向いたままだ。
クランチはそんな様子も全然気にならないようだ。
「?!なんだじょー?」
「お前は、どっちの、味方、なんだ?」
「へっ?」
クランチはジャッキーを味方につけたいようだ。
「俺のほうが正しいに決まってる。ジャック、お前もそう思うだろう?」
「クランチのアニキよぉ、ボクちんにはなんのことを言っているのか――」
「おい、クランチ――」
クラッシュまで乱入してきた。
「お前には関係ねぇよ、引っ込んでろ」
「どうせ賄賂かなんか売っていたんだろう、卑怯だよ」
クラッシュときたら言いたい放題だ。
「お前、バカのくせしてなんで賄賂なんて言葉を知ってんだよ」
クランチも気持ちへのセーブが既に効かなくなっている。
「そんなの知らないよ!っていうか、『バカのくせして』って何だよ!そっちのほうが問題じゃないか!」
「大体、お前はチビクマたゃんのことを何にも分かっちゃいねえんだよ!」
「別に分かりたくなんか無いし・・・」
クラッシュは正論を言った。
「ク・・・クラッシュの言う通りだと思う――じょー。多分、きっと、ウン・・・」
ジャッキーが珍しく遠慮がちに言った。
もしかしたら、クランチが怖いのかも・・・
自分に味方がいなくなったクランチはちょっと蒼白な顔になったような気がした。
もしかしたら見間違いだったかも知れないけど、すぐに元の色に戻った。
「ふーん。そうか、そうか――どうやら俺がこの家にいるというのはおかしいみたいだな・・・」
「えっ?」
「俺は場違いなんだろう?どうでもいいチビクマちゃんなんかに必死になってさ――」
「そういう意味で言った訳じゃ無――」
「いいよ。ここを出てく。もう決めた」
クランチはすっくと立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待つじょー。ひとまず落ち着いてくれじょー」
ジャッキーは思わず引き留めようとした。
――。
――ん?
(ちょっと考え直せじょー。もし、このままクランチが出ていけば、クラッシュを倒すのは簡単なんじゃないかじょ?今はあの厄介な妹もいない・・・これはチャンスだじょ!キシシ・・・)
ジャッキーはクランチの凄味に負けた『フリ』をして、サッと引っ込んだ。
普段から誰かの下につくのが習慣になっているから、演技をするのは得意だった。
クラッシュとジャッキーが立ちすくむ真ん前で、クランチは荷物をまとめ――恐らくトレーニング用具が殆どだろう――今、頼れる兄貴分が出ていこうとしている。
「待てよ・・・オイラが悪かったよ。チビクマちゃんは探すからさ、ねぇ――」
「・・・・・・フン」
「・・・・・・」
無言の状態が続く。
さすがのジャッキーでさえも、何かしらの言葉をかけてあげることが出来なかった。
「・・・ココに宜しく頼むぜ、じゃ・・・」
「そんな・・・」
そしてクランチは家の丸扉を開けて、ムンムンする外の熱気の中へと出ていったのだった。
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最終更新日(10.06.01)
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