Chapter9(6/6ページ目)
チビクマちゃん騒動





クラッシュは半ば放心状態になった。

ジャッキーはそっと扉を閉め、クラッシュの元に向かった。

「・・・落ち着くんだじょー。きっとそのうち、けろっとして戻ってくると思うじょー」

「『そのうち』なんてあるか――」

クラッシュは寂しかった。

ココはいない。

クランチは出ていった。

アクアクは『仕事』から戻ってこない。

横にいるのはハリモグラ、それだけ・・・。

(何か洗脳される前を思い出しそう・・・)

クラッシュがコルテックス(と、ブリオ)に誘拐される前は、まさに本能のまま生きてきた。

タウナと二人で森の中暮らしてたっけ。


『ほら、タウナ。リンゴ採ってきたよ!』

『アラアラ、クラッシュったら張り切り過ぎよぉ〜。こんなに食べられないわ・・・』

『そうかな〜?・・・んじゃ、オイラが食べちゃおう』

『ち、ちょっと、クラッシュったら。そんなに勢いよく頬張ると喉に詰まらせちゃうわよ〜』

『まっさか〜。オイラはいつもこんな感じで食・・・ゲホッ、ゲホッ・・・』

『ああん、もう、クラッシュったら。おドジさんなんだから・・・ほら、大丈夫?』

タウナはクラッシュのフサフサな背中をさすった。

やがて、クラッシュの喉の詰まりも取れたようだ。

『ふぅ・・・。もう大丈夫だよ、タウナ』

『ホント、クラッシュっておっちょこちょいなんだから〜。』

『アハハ。ゴメ〜ン』

『フフッ。何か、可笑しくなってきちゃったわ。クラッシュのせいよン』

『タウナってば、いつもそうなんだから〜――』


「――ハァ・・・」

クラッシュは小さく溜め息をついた。

ジャッキーはその様子にちょっとだけニヤニヤした。

「ん?何をニヤついてんのさ、ジャック」

「え?あ、別に何でもないじょー」

「ジャックってさ、案外無神経なんだね」

「うゎ、また随分ストレートにくる言葉だじょー。でも、ボクちんにはこれが精一杯だじょー」

「そう・・・あのさ――」

クラッシュがジャッキーに聞いた。

「何だじょ?」

「オイラ、これからシカゴに行こうと思うんだ」

「へぇー。何で?」

「そりゃ勿論・・・って、分からないか。あのね、オイラの妹が今向こうにいるんだ。会いに行こうと思ってね」

「妹・・・」

ジャッキーの顔が少し険しくなったような気がした。

「どうかしたの?」

「別に・・・」

「まあいいや。でも、本命は・・・ああ、待ってろよ、タウナ・・・」

クラッシュはもう一度だけ溜め息をついて、ピョンと立ち上がった。

「そうだ、ジャックはさー。う〜ん、どうしよう・・・留守番お願いできるかな」

「っ・・・(それじゃ、クラッシュを見張れないじょー)」

ジャッキーはクラッシュを見張るようコルテックスに言われていたので、これは大変だ。

(何とかして一緒に連れてってもらうか、でなくちゃシカゴに行くのをやめさせないと、だじょ・・・)

どっちが自分達にとって得なのだろう。

どっちにしろ、クラッシュの近くにいないと・・・。

これは重大な選択だ――。

「じゃ、宜しく頼むよ?」

クラッシュが聞いてきた。 (うわ〜。これ、どうすればいいんだじょ・・・?)

・・・。

ジャッキーが考える間、クラッシュは喋らずに待っていた。

「?」

(よし、決心がついたじょ!)

「クラッシュ・・・あの・・・一緒に連れてってくれるかじょー?」

クラッシュの意思は固そうに見える。

ちょっとのことではやめてくれそうにない。

だったら、一緒に付いていくしかない。

しかし――

「え〜っ、一緒に来るの?!」

「ヘッ」

かなり拒絶したような反応を見せられた。

「だめなのかじょー?」

ジャッキーはクラッシュに聞いた。

「別に嫌な訳じゃあないんだけれどさ、ちょっとね・・エヘヘ・・・」

「はっはーん。タウナだじょね?」

「ッカー、バレちゃったか! まあ、そういう訳だからあんまり一緒に来て欲しくは・・・ん?」

「どうしたじょー?」

「なんでタウナのこと知ってるの?」

「なんでって・・・さっき自分で言ってたじょー」

一寸前に話したことを忘れるのは良くあること。

回想にふけっているうちにブツブツと口から漏れたようだ。

「――とにかく、一緒には来ないんで欲しいんだ」

「でも、タウナの側にはピンストライプがいるじょー」

「ジャックって何でも知ってるなあ。オイラ達とあの頭でっかちとの関係・・・」

ジャッキーはこの言葉にカチンときてしまった。

「コルテックスさまにそんな口の利き方は許せないじょー!」

当然、クラッシュはビックリする。

「え?何言ってんの?」

(しまったじょー。つい根が出ちゃったじょー・・・これは危ないじぇ・・・)

ジャッキーはすぐに取り繕った。

「だ、だから・・・それを言うなら『ハゲでバカで頭でっかち』だじょー」

こんなことを言うのは辛かっただろう。

でも、一緒にいるためには仕方がない・・・。

(コルテックスさま、ごめんなさいだじょー・・・)

一方、クラッシュのほうは納得してくれたようだ。

「あ、それ言えてる。中々鋭いこと言うじゃん」

「口だけなら絶対に負けないじょー。エヘン! だじょー」

「よし、じゃあ、ジャックも一緒に来る?」

どうやら、クラッシュの考えを変えることに成功したようだ。

「えっ?いいのかじょ?」

「ウン、一緒にいると結構楽しいし。ジャックもオイラ達のファミリーの一員だよ。同じバンディクーじゃなくても――」

「あ・・・ありがとう・・・だじょー・・・」

(どうしよう、両方に良い顔見せてたら、いつかバレて、どっちからも見放されるかもしれないじょー・・・)

ジャッキーは、そんな恐怖な将来を心配してしまう。

「じゃ、行こうか、ジャック」

「あ・・・うん・・・」

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