Chapter6(4/6ページ目)
張込開始

「ムニャ・・・もう十分だじょ・・・」

もう月は高くまで昇り、黒いビロードのような空は満点の星で埋まり、本物のプラネタリウムになっている。

森は異常なまでに静かで、海岸で動くものといったらゆっくりと上下に揺れる波だけだ。

そんな中明るく賑やかだった丸く赤い屋根の家も今は静かで、周囲の様子に溶け込んでいた。

そんな夢の世界の中、ジャッキーは寝言を言いながらスヤスヤ眠っていた。

しかし、それから1時間ほど経って――。

「もう食べられないじぇ・・・ファ、ファ・・・ファックション!・・・う〜ん・・・寒いじょ〜・・・」

目を開けたが、目の前は昼間以上に明るく、ビックリしてしまった。

起きると、辺りはピカールの群れで輝いていた。

その中の一羽がジャッキーの鼻に止まって、彼を起こしてしまったらしい。

夜行性のピカールは元気に飛び回り、ジャッキーが動いても逃げることは無かった。

「寝ちゃったじょ・・・そういえば、アイツらはどうしてるのかな・・・」

ジャッキーは寝ぼけ眼のまま、灯かりの点いていないクラッシュの家の中を覗き込んだ。

が、カーテンのせいで良く見えない・・・。

「――ということは、もうみんな寝ているってことかじょえ?」

さすがにコルテックスに連絡するには遅すぎる時間になっている。

ジャッキーは携帯電話を背中のトゲの中にしまった。

上半身は何も着ていないし、ズボンにはポケットが付いていなかった。

何もすることが無く、ヒマになってしまったジャッキーは、何となく空を見上げた。

別に見たくて見た訳じゃないけど、何故か見上げたくなってしまったのだ。

「おわぁ・・・凄いじょー・・・」

今まで気付かなかった景色がそこにはあった。

ずっと建物の中にいると気付かないものだ。

いくら洗脳されても、いわゆる『感性』は変わらない。



ところで――

クラッシュ達は、寝ていた訳ではなかった。

カーテンの向こうでは、クラッシュとクランチがヒソヒソ声で話していた。

クラッシュは、手に虫かごに入ったピカールを持っている。

寝る前に一匹捕まえたのだ(因みに、寝ているジャッキーには気付かなかった)。

「ほら、ここをこーして・・・」

「もっとしっかり巻いたほうがいいぜ。光が漏れたら、ココが起きるだろ・・・」

二人は虫かごの周りを黒い紙で覆い、上にしか光が漏れないようにしていた。

手作りの懐中電灯のようだ。

丸い光が天井に映る。

「よし、出来たぞ・・・」

「・・・本当にやるのか?後が恐くなりそうだけど・・・」

「大丈夫だって!お兄ちゃんであるオイラが言うんだから・・・怒るのはその場だけさ。・・・でもちょっと怖いなぁ。どうしよ・・・」

「自分でやるって言ったんだろう?リスクが低いなら大丈夫だろ?」

「・・・だよな、大丈夫だよね」

そして二人はココの部屋のドアに向かった。

ドアを音も無く開け、そっと中に忍び込んだ。

ココはスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。

「それじゃ、いくぞ・・・」

クランチがとても迫力のある暗い声で「起きろ〜」と言って、クラッシュは顔の下から光を当てる。

当然、ココは目を覚まし、そしてクラッシュを見て・・・

「きゃゃゃゃゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

とんでもないほどの悲鳴が外まで聞こえたのは言うまでもなかった。

クラッシュとクランチはドッキリ大成功を喜びあったが・・・

「・・・お兄ちゃん達だったのね・・・」

「ヒィッ」

「よくも私を夢の世界から引き戻してくれたわね・・・」

「あのー、怒ってる・・・?」

「怒ってなんかいないわよ、フフフ・・・」

今度はクラッシュの悲鳴が、ココよりも大きく響いた。

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最終更新日(10.02.07)
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