Chapter2(2/4ページ目)
海岸にて
「いゃっほ〜い!」とビーチに声が響いた。
まずは浅瀬で水遊びだ。
アクアクは木の仮面だし長寿であるが故に、水のかけあいには参加しなかった。
一方、クラッシュ達はこれでもかというほどバシャバシャとしぶきを上げ、まるで海の上にある噴水の中にいるようだった。
「なあ――」
クランチはこっそりとクラッシュに呼びかける。
「わっ、やめろ、ココ・・・えっ、何?」
「あのさ、ココって――」
「うん――」
「こういうときはさ――」
「うん――」
「可愛いよな」
「ん・・・・・・えっ!?」
クランチの言葉をクラッシュの脳が理解するのに少し時間がかかった。
クラッシュでも面食らってしまったようだった。
いきなり自分の妹が「可愛い」と言われると・・・
でも、否定は出来なかった。
いつも結わいている髪をほどき、肩よりも下までさらっと伸びている。
そして、その髪がなびくココの姿はクラッシュが見ても別人――別バンディクーと書くのが正しいかもしれないが――に見えた。
クラッシュはこんなココもいたのかと思ってしまった。
『灯台もと暗し』という言葉があるが、まさにその通りだったのだろう。
他の人に言われて、初めて身近の、とある事実に気付くことは良くあることだ。
クラッシュとクランチは、水をバシャバシャとはね飛ばすのも忘れ、まるで剥製のようにココを見つめていた。
ココは首を傾げて言った。
「お兄ちゃんもクランチも、どうしたの・・・急に固まっちゃって。しかも、鼻の下伸ばして・・・何に一目惚れしているのよ」
本人は、まるで気付いていなかったように振る舞った。
『振る舞った』ということは、クラッシュ達が自分に首ったけなのに気付いていたということだ。
良く知っている人が急に食い入るように自分を見つめてきたら、気持ち悪いったらない。
まだ石のようになっているクラッシュとクランチに、ココは水をぶっかけることで対処した・・・。
三人は海から上がり、パラソルの下に向かった。
このパラソルとイス、結構前からこの場所に置かれていた。
そのせいで、いつだったか大波に呑まれてバラバラになったことがある。
「あー、楽しかった♪」
ココは聞こえよがしに言った。
二人の目を醒まさせたかったのだ。
一日中見つめられたら、体に穴が開いてしまうかもしれない!
クラッシュとクランチはその「あー、楽しかった♪」を聞いて、いつものココに戻ったのだと悟った。
それっきり、食い入るようにココを見つめることは無かった。
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最終更新日(09.08.27)
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