Chapter2(1/4ページ目)
海岸にて

――という訳で、朝食の席には四人が揃い、リンゴのパイは、三人分に切り分けられた。

クランチは野菜ばっかり食べるが、逆にクラッシュはリンゴパイや他のリンゴ料理に、もちろん素のリンゴも沢山食べ、野菜には目もくれない。

ココは、食事が偏っていると注意しても効果がないのが分かっていたので、今は何も言わない。

クラッシュは食べるのに一段落つけてからココに尋ねた。

「ココ、今日はオイラ達、なにするんだっけ?」

「ぅん?えーっとねぇ・・・今日はまた日光浴とか、いろいろ」

「そうか、いいねぇ」

「それに、サーフィンもやるぜ、クラッシュよぅ」

「うん、それもいいねぇ」

「わしがモテモテトレーニングの特訓をしてやってもいいぞよ」

「ぅ・・・それは遠慮する・・・」

アクアクの意見は頂けなかったようだが(アクアクが冗談で言ったのは言うまでもない)、クラッシュは喜んでいるようだった。

何もかもが平和。

今日は、誰にも邪魔されたくない、いや、邪魔させない。

空は雲一つ無く、青いグラデーションを作りだしている。

しがらみなんてなかった。

クラッシュの家の中もそんな空と同じだった。



でも、天気なんてずっと同じわけじゃない。

快晴もあるけど、曇りだって、雨だって、風の強い日もある。

十次元に行ったとき、向こうの世界の空は赤く、黒い渦が幾つも巻いていて、そして雲がどこまでも、どこまでも続いていた。

そんな十次元に行ったとき、どんな目に遇ったか・・・

クラッシュは今でも覚えている。

自分そっくりのエビルクラッシュがコルテックスを捕食しようとしていた。

あのときばかりは、クラッシュもコルテックスが可哀想に思えた。

そして、かつてコルテックスのペットだった双子のオウム――兄は冷静なビクター、弟は陽気でやんちゃなモーリッツだ――が襲ってきて・・・

あの天気の下でいいことは無かった気がする。

悪夢という言葉はこのためにあるのかと思ってしまう位だ。



あれとはうってかわって、今はいい天気。

まさにレジャー日和だ。


さて、朝食も食べ、クラッシュ達は準備万端。

久々にアクアクも一緒になって、家の目の前にある海岸に来た。


「うむ、今日の海は穏やかじゃな。絶好ののんびり日和じゃ」

アクアクは嬉しそうに言った。

「そう、ここはオイラにとって『第二の人生』の始まりの場所だから・・・ここはオイラの――あー、何ていうか・・・」

「『ふるさと』でしょ、お兄ちゃん」

・・・。



別名「目覚めのビーチ」。

クラッシュがコルテックスの元から命からがら逃げてきた場所だ。

大の水嫌いでカナヅチのクラッシュを地上まで連れてきた場所だ。

クラッシュはそれ以来この場所を『目覚めのビーチ』を名付け、この近くに住み、日々この海岸と戯れた。

「だって、波は優しくて、そりゃ、たまには荒々しいこともあるけど。えーと、あと・・・とにかく・・・なんだ・・・あの・・・すごいんだ」

クランチがクラッシュとココの家に居候し始めたとき、クラッシュはまずこのことを話した。

クラッシュが不器用なせいでそのときは「おい、何が言いたいのか分からないぜ」と言われてしまった。


しかし、どうしてもこの気持ちを伝えたかった。

そこで、クラッシュはクランチを半ば無理矢理に海岸まで引っ張って来た。

それだけで説明がついたかどうかは分からないが、とにかく「おもしろそうな海岸だな」とは言ってくれた。

クラッシュはそれだけで満足したようだった。

それからというもの、二人は一緒に日光浴をしたり、サーフィンもやったり。

ビーチは、クランチを快く受け入れてくれた。

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最終更新日(09.08.27)
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