Chapter Final
再び、ここはオムニトリックスの中。
中では、何かいつもより騒がしい感じがした。
リップジョーズは、遠くで赤い光が光るのを見た。
「ん・・・?グレイマターか?やっと戻ってきたんだな、ったく、長い間外にいやがって、こっちが『羨ましい』さ・・・」
リップジョーズも、たまには外に出たいと思っていた。
彼は、あまりベンにお呼ばれされることがなかった。
リップジョーズは、グレイマターに話を聞こうと、その場を離れて、今は緑色に光っている方へと歩いていった。
「グレイマター、どこにいるんだ?出て来いよ」
探しているが、中々見つからない。
グレイマターの歩行スピードから考えると、この辺りのはずだ。
そう考えていると・・・
「ん・・・?何か踏んだぞ、もしかして・・・やっぱり、だ」
予想的中、リップジョーズが踏みつけてしまったのは他でもない、グレイマターだった。
小さいがために気がつかなかったようだ。
彼は、足をどけて、グレイマターを立たせた。
「ごめんよ、気付かなかった」
「いいよ、もう慣れてるからさ・・・」
「それより、随分と外にいる時間が長くなかったか?何かしたんじゃないだろうな」
「えっ、このボクが?まっさか〜・・・実はね、話せば長いんだけど・・・聞くかい」
「おぅ、その言葉に甘えるとするか・・・俺、正直なところ、お前のことを心配していたんだ。ほら、この前ひどいことを言ったろ・・・」
二人――いや、二体とか二匹のほうが合っているかもしれないが――は、さっきまでリップジョーズがいた、水のある場所まで行き、そこで今までの出来事を話し始めた。
それからしばらくして。
グレイマターは、全てを語り終えた。
しかし、何故かグウェンのことが悪く言っているように聞こえた。
ぶたれたり蹴られたりした腹いせだろうか。
「ふーん、あの娘(こ)がねぇ・・・元に戻すためにやったことだろう」
「ああ、多分ね。もう、外に出るのがいやになったよ。ロクなことがない」
「どうしてさ」
リップジョーズが最後に見たグレイマターの姿は、外に出たくてたまらないといった感じだった。
矛盾している。
「だって、元々ボクの種族は争いを好まないんだよ、それなのに、外にいていつ敵が来るのかと心配するなんて無理な相談さ」
「・・・っえ?」
リップジョーズがこの言い分を飲み込む前に、グレイマターはその場を離れ、フォーアームズのところへと向かっていた。
勿論、言うことは決まっている。
『外の世界なんて、危険がいっぱいで疲れるだけじゃないか』
・・・。
そんな彼を、リップジョーズはずっと不思議そうに見つめていた。