BEN 10 小さな問題 その2


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Chapter1

今日は、私にとって久し振りの夏休み。
そう、「平凡な」夏のとある一日なんだ。

というのも、私の十歳の夏休みが「平凡な」夏休みじゃなくなったのは、私のいとこ、つまりベンのお陰だ(お陰って言うより、いとこのせいと言うべきかもね)。
とにかく、気を休めることができるのは嬉しい、すごく嬉しい・・・。

勿論、今までに他じゃ体験できないようなことを沢山体験することが出来た。
宇宙に行くことが出来た。
色々な種族に出会えた。
様々な敵と戦った。
確かに、それはそれで楽しかった。

でも、楽しいとか言っていられないことも沢山ある。
何度も死にそうになった。
さらわれたこともあったっけ・・・。
そして、いとこにいろいろと振り回された。

せっかくオムニトリックス――エイリアンに変身できる時計――を手に入れたのに、どうも間違った使い方をしているというか、やり過ぎで私にも被害が被せられる。
しかも、いとこときたら、全く懲りないから、同じことを何度も繰り返す。
こんなんじゃ、私の体が幾つあっても足りないよ。

そんな私のいとこが、ベン。
で、私はそんなベンを少しでも安全な方向に導いてあげようと頑張ってる。
それに対してベンはいつも反抗してくる。
私、そんなベンがちょっとお気に入りだったりする。
何ていうか、行動がかわいいんだよね。

今日は、おじいちゃんに頼まれて、ベンを日々の戦いで溜まっているだろう疲れから癒してあげるように頼まれたんだ。
『公園にでも行けば、きっと心身共に疲れがとれるさ』
おじいちゃんはそう言っていたけど、ベンのことだし、きっとすぐにブーブー言い出すに違いないと思うんだよなぁ・・・。
ベンはそんな人だから、私は普段ベンのことをからかっているけど、何かあったときには力になるつもりでいる。
憎たらしい部分もあるけど、ベンは私のいとこなんだ・・・。


「なぁ、グウェン、ボク、もう疲れちゃったよ〜。キャンピングカーに戻ろうよ」
・・・。
やっぱり。
案の定、ベンがぐちぐち大魔王になっちゃった。
まだ、歩き出して十分も経っていないのに・・・。

空は、夏らしくキラキラと輝いているけど、ベンの気分はそれとは対照的にローテンションみたい。
「ベン、今日の散歩はあんたの為なんだよ、最近疲れているように見えるし、気晴らしになるかと思って誘ったんだけど・・・」
「フン、エイリアン・ヒーローになって、敵と戦うよりも、散歩のほうが何倍も疲れるさ」
「余計なことを考えるからじゃないの?もっと心を無にしなくちゃ」
「絶対無理。そんなことは、グウェンみたいなヒマな奴じゃないとできないね、
 それより、帰らないんだったらゲーセンでも行こうよ。散歩よりずっと気晴らしになるよ。
 スモウスラマーの最新版が出たから行こうと思うんだ」
はぁ・・・。

何でそんなこと言うかなあ。
だったら私はベンの愚痴を聞きながら散歩するより、美術館とか、博物館に行きたいよ・・・。
でなくちゃ、お買い物に行きたいなぁ。

・・・そっか。
自分のことは自分が一番良く分かっているってことか。
もしかしたら、ゲーセンに行った方がいいのかも。
娯楽の方が疲れた心身を癒せるのかもしれない。
でも、ここでみすみす引き下がるのはベンの為にならない気がする。
自分の思い通りに世界が動いている訳じゃないというのを判らせなくちゃ。

「―ェン?グウェン?大丈夫?」
「ん・・・あっ、何?」
ベンが私にずっと呼びかけていたのに気づかなかった。
突然気付いたものだから、私はちょっとうろたえてしまった。
「あのさ、さっきから険しい顔してるけど、どうかした?」
「いや、何でもない。考え事していただけ」
「どんなこと?」
「これから何処に行こうかって考えていたんだけど、あと15分位散歩してからゲーセンにでも行こうか?」
・・・うまく話に乗ってくれるかな・・・。
「おっ、いいじゃん。行こうよ、ゲーセン。またスモウスラマーの対戦をやらせてやるぜ」
ホッ。機嫌は良くなったみたい。良かった。
「でも、やっぱりすぐに行きたいな・・・そうか、わざわざグウェンと一緒に行く必要なんてないんだ。
 グウェン、ボクは先に行ってるよ、スティンクフライになって飛んでいけばあっという間・・・いや、XLR8のほうがいいかな・・・」
「んもう、あんたはそういう楽天的な性格だからヘマやっちゃうんだよ、まあ、治るかどうかも分からないけどー」
「何だよ、その言い方」
「とにかく、普段の生活にエイリアン・ヒーローの話を持ち込まないでよ、周りの人たちは疲れているの・・・私だって疲れているんだから・・・」
「・・・・・・ふーん。・・・じゃあ仕方ないか」
今回は私に軍配があがったみたい。