Chapter11(1/6ページ目)
すろーらいふと港の生活、そして用事(後)

「やあ、こんちゎ! ドラッグレース場にようこそ!」

建物の扉を開けた瞬間、かなりハイテンションなチョロQに出迎えられた。

別に嫌って訳ではないけど、びっくりするなあ・・・

とりあえず、僕も「や、やあ!」とカチコチになりながら返事を返した。

「ォ?! 君は新人レーサーのアグネス君だろ? 違うかい?」

「えっ?! そ・・・そうですけど――知っていたんですか?」

「そりゃ、なんてったって、最近腕を鳴らしている新人レーサーだって、もっぱらの噂だぜ! 君の友人のバラートも結構話題に出るぜー。で、早くもレベル2に突入かよ!? 信じられねぇって――」

このチョロQ、きっとムードーメーカーなんだろうな・・・

いきなり馴れ馴れしいけど、嫌いにはなれなかった。

「あの、あなたのお名前は?」

「俺か? 俺は『ドラッグレースのジョニー』!! こう見えても、過去にドラッグレース大会で優勝したことがあるんだぞ。今は引退して、こうして店をやっているけどな」

「ふーん。じゃあ、優勝カップとかもここに?」

「そうだ。見たかったら自由に見ていいぜ」

僕は、隣の部屋に入った。

そこには、大きなガラスケースと、その中に入った幾つかのトロフィーや優勝カップが飾られていた。

年号を見ると結構昔だったけど、錆びてはいなかった。

ジョニーは毎日きれいに、丹念に磨いているのかな・・・

ああ見えて結構マメな性格なんだな。

人(チョロQ)は見かけによらないや。

「すごいですね。――そうだ、僕、ドラッグレースをしに来たんだった」

「オォ、そうだったのか?! だったらそうだと言ってくれれば良かったのに。まあいいや。エキサイティングの世界にようこそ、だ。アグネス!
あのたまらない加速、矢のようなスピード、唸るタイヤとエンジン――どれをとっても最高だぞ、きっと」

最後の言葉は小さくヒソヒソと言った。

魅惑の言葉とでも思っているのかな。



僕は、建物の反対側へと案内された。

そこは、僕が見渡す限りどこまでも続く青空、草原、そしてアスファルトの道が一直線に続いていた。

それと、距離を示す看板もあった。

100mおきに看板が刺さっている。

「あの、僕ドラッグ用のエンジン持っていないんですけど、大丈夫ですか?」

「ああ、それなら心配いらねぇよ! 貸し出し用のがあるからな。お前のレースでの活躍に免じて、タダで貸してやろう」

「本当ですか? ありがとうございます!」



僕は一本道の真ん中に動いた。

目標は真っ直ぐ、真ん前。

これほど潔い道はないのではないかと僕は思ってしまった。

「じゃー、始めるぜ! 3シグナルの後にスタート、1000m地点がゴールだからな! ビビんじゃねぇぞ! 心配するな!」

「はい・・・」

「声が小さい! それに気弱に見える!」

何なの・・・? これじゃ、まるで鬼教官に教わる教習所の生徒みたいだ。

僕は、仕方なく大声を出した。

「おう!」

「うん、せいがいいねぇ! その調子だ! じゃあ、行くぜ!」

ジョニーはシグナルの作動スイッチを動かした。

――ランプが1つ点灯した。

――2つ。

――3つ。

僕はエンジンを軽くふかせた。

その瞬間、「ポーン!」という電子音がその場に響き渡った。

それと同時に僕はエンジンを思いっきり吹かした。

ふとバックミラーを見ると、白煙が遥か後ろに見えた。

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最終更新日(11.04.21)
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