Chapter10(4/4ページ目)
すろーらいふと港の生活、そして用事(前)

「おっ、アグネスじゃないか、ロングサーキット以来だな。おやおや、大分疲れているじゃないか。どれ、見てやろうか」

僕は、ゼンマイスポーツランドでQ'sファクトリーに寄り、ロングサーキットのときお世話になったレッカー車に会いに行った。

この時、僕は既に疲労困憊だった。

ちょっと無理しすぎたのかも。

やっぱり、ここに寄って良かった。

「ふむふむ・・・クラッチが少し傷ついているな、ちょっと待ってろ」


「よし、これで完璧だ。どうだ?ギアの切り替えがスムーズになっただろ」

確かに。

ちょっと整備工場を走ってみたが、ギアが驚くほどスムーズに切り替わるようになっていた。

「うわぁ。凄いですね。ありがとうございます。お金は・・・」

「要らないよ。レーサーは無料なんだ。なんてったって事故はつきものだし」

「いいんですか。感謝、感謝、です!」

僕は、いい気分でファクトリーを出た。

さて、これからどうしよう。

すぐ電車に乗るか、ぶらっとするか・・・

そういえば、ここはスポーツランドだし、コースもいっぱいあるから、もしかしたら誰かいるんじゃないかな・・・

僕は、ちょっとスポーツランドの中を探検してみた。

しかし、誰も知り合いはいなかった。

(みんな、今頃何をしているんだろう・・・)

だけど、今の僕に走る由も無い。

今は、アンブレラポートへ急いでいかなくてはならない。

僕は、連絡通路から駅に入り、Qカラー王国方面の電車に乗り込んだ。

(はぁ、やっと休める。それにしても、本当にみんなは何をしているんだろう。きっと、頑張ってやっているんだろうな・・・)

何だか、僕だけレース界から置いてけぼりにされてしまった感じだ。

でも、そんなこと、ありえない・・・あるはずないさ。

僕は、自分にそう言い聞かせた。

そして、ジリジリしながらアンブレラポートに着くのはまだかと思っていた。


〈えー、間もなく、アンブレラポート駅に到着します――〉

僕は、そのアナウンスの声で目が覚めた。

今日は何だかとても長い気がする。

マウンテン・マウンテンを下山したのがずっと前のように感じる。

でも、下山したのは今日なのだ。

外は、既に夕焼けで、太陽は最後の光で車内を照らしている。

ずっと寝ちゃったんだな、でも通り過ぎる前に気が付いて良かった。

僕は、駅を出て周りを見渡してみた。

母さんの言い方からして、寂れた港町なのかと思ったが、実際は意外と活気溢れていて、すぐ目の前には市場があり、たくさんのチョロQ達が買い物をしている。

これが、治安の悪い町・・・?

まさかね、ハハハ。

でも、こんな時間なのにちょっと台数が多すぎる気がしないでもない。

「さ、まずは宿を探さないと。10日まではあと2日。路上で時間を潰すわけにはいかないんだよね」

治安の悪い町だから、路上で過ごすなんてとんでもない。

僕は、宿を探してみた。

あっ・・・でも、Q'sファクトリーのほうがいいかも。

何度も言う様だけど、あそこなら無料だから。

至れり尽くせり、といったサービスは無くても、整備はやってくれる。

今の僕にとっては、そっちのほうが重要だ。

僕は、歯車の看板を探してアンブレラポート市内を走り回った。


「うへー、ここって広すぎるよ。いくら走っても見つからない・・・」

僕は、見事に迷ってしまったようだ。

いくら走っても、同じような風景が続くばかりだ。

両側には大きなコンテナがいくつも積み重なっている。

もしかしたら、同じところをぐるぐる回っているのかもしれない。

「どうしよう・・・そうだ!倉庫を探すんだ、多分――」

僕は、コンテナを収納する倉庫が無いか探した。

やっぱり広すぎて時間がかかったが、それでも何とか見つけた。

「この壁の何処かにQ'sレッカーの呼び出しボタンが・・・あった!」

僕は、そのスイッチを押した。

スイッチが点滅し、間もなくスピーカーから声が聞こえてきた。

〈はい、こちらはアンブレラポートのQ'sファクトリーだ、何かあったのか?〉

僕は横のマイクに向かって返答した。

「あのー、僕旅をしているんですけど、迷子になっちゃったんです」

〈おお、そうか、そうか。この町は複雑に道路が入り組んでいる上、港はコンテナだらけでまるで迷路だ。 始めて来たらそりゃ迷うよな。よし、そこで待っていろ、すぐに迎えに行くからな〉

「はい、ありがとうございます」

スイッチの点滅が消え、スピーカーも「プチッ」という音を残して切れた。

ふぅ・・・。

このスイッチがあって良かった。

無かったら、ずっとずっとこの港を彷徨っていたかもしれない。

そう考えているうちに、Q'sレッカーが来た。

「よっ、君かな、私を呼んだのは」

「はい、助かりました。Q'sファクトリーを探していたんです」

「ハッハッハ・・・港側じゃなくて町側にあるんだ、見当はずれだな。さっ、運んでいこう」

「いえ、自分で走れますから・・・付いていきます」

「ふーん・・・そうか、それならいいけどな」

僕は、Q'sレッカーの後に続いて町へと戻っていった。

途中、何度か見失いそうになったが何とか付いていき、無事にQ'sファクトリーに着いた。


「あのー、今日ここに泊まってもいいですか?」

「ああ、大丈夫だよ、ゆっくりしていきな」

はぁ。

今日は長い一日だった。

あれこれ考える前に、睡魔が襲ってきた。

僕は、また夢の世界へと旅立っていったのだった・・・




『お前達は私の捕らわれの身なのだ、逃げようなんて考えるなよ』

『・・・っく・・・!』

僕は、正体不明の敵に捕まっていた。

周りは真っ暗で何も見えない。

でも、僕の両隣で何かモゾモゾしているような音は聞こえる。

そして、目の前にはさっきの声の持ち主らしきチョロQがいるのだろう。

自分だけが、暗い暗い宇宙にポツンと浮いているようだった。

何だ?

どうなっているんだ?

僕は困惑してしまった。

僕は、今のフロントタイヤの位置が何だか痛く感じたので、ちょっと右に動かした。

しかし、それが引き金になってしまった。

『おい!動くな!逃げる気だな・・・そう思ったことを後悔させてやる』

僕の目の前で、急に光の弾が飛んできた。

それは、僕めがけて飛んでくる・・・エッ!!!

『ウワワアアアアァァァァッッッッ!!!!』

僕は目の前が真っ白になった。




「・・・ハッ!・・・あれ・・・ここは・・・」

僕は、Q'sファクトリーの中にいた。

今のは夢だったのかな・・・いつも新しい場所に行くとこういう嫌な夢を見るけど、今回のは妙にリアリティがあった・・・。

僕の悲鳴(?)を聞きつけたのだろうか、さっきのレッカー車が飛んできた。

「おい、大丈夫か?何かあったのか?」

「いえ、大丈夫です。夢を見ちゃって・・・新しい場所で寝たりするとよく変な夢を見る癖があって・・・」

「(嫌な癖だな・・・)そうか、それは大変だな。じゃあ、体に異常は無いんだな」

「はい」

「そうか、なら大丈夫だ。しかし、ここでは他のお客さんも眠っているんだ。夢の中の自分に静かにするよう言っておいてくれよ」

「あー、言えたら言いますよ、じゃ、おやすみなさい」

今度は、嫌な夢を見ずに寝ることが出来た。

そして、朝までぐっすりと寝たのだった。


そして朝。

今日は9日。

約束の日まであと1日・・・明日か。

何を話してくれるんだろう。

僕はマウンテン・マウンテンの下山中に出会ったあいつのことが気になっていた。

そのことに関して何か知っている可能性はあるのだろうか。

うつむいていると、レッカーのおじさんが来た。

「よお、おはよう。早いじゃないか・・・ン、どうかしたのか?」

僕はレッカーのおじさんに「またうなされた」と嘘をつき、礼をしてからQ'sファクトリーを出た。


そうしよう。

何となく、ここのQ'sファクトリーの人と気まずい関係になってしまった気がする。

これも、全部あの夢のせいだ――

ああ、兄さん、早く会いたいよ・・・


僕はくどくどいいながらアンブレラポートの市街地をずっとウロウロした。

これといった理由も無いが、かといってどこかに行くつもりも無かった。

時間が無駄に過ぎていくような気がした。

きっと、バラートなんかはこの間にもレースの特訓をしているんだろうな。

「・・・ハァ。最近病んできた気がするなあ。この町って娯楽施設とかあるのかなあ。あったらそこでストレス解消できそうだけど・・・」

こう思った僕は、町の地図を探し、そういった場所を探した。

パッと見、興味をそそるものは無かったけど、目を引くものはあった。


『無駄な時間を忘れよう!カッ飛ばして気分爽快!ドラッグレース!!』


「ほぅ、ドラッグレースか・・・僕、ちょっと怖いんだよな。まだ。あんな猛スピードで走るんだし。でも、本当に今は暇なんだ。もしかしたらレースの特訓にもなるかも知れないし、行ってみようかな」

僕はその地図と地図についていた広告を頼りに、ドラッグレース場までノロノロと向かった。




QC暦098年5月9日(土)
走行距離 180Qkm
所持金 9250G
ポイント 14ポイント
??? ???



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