Chapter9(3/3ページ目)
準備

マウンテン・マウンテンの住民は皆親切で、温かい人たちだった。

アグネスを快く受け入れ、少し話をした。

ここに住むチョロQ達は、自給自足の生活をしている。

高地でしか育たない食べ物を育てたりして――皆それぞれ違う食べ物を育て、ほしい食材は自分のものと交換しているそうだ――余った分はここに来る人に売ったりクラスクシティから来る業者に売ったりして生計を立てているとのことだ。

なんて素晴らしいスローライフだろう。

「――じゃ、僕はもうちょっと向こうのほうまで行くんで・・・」

「うんだ、またおいで。ところで、しばらくここにいるなら手伝いとかしてみないか?足腰鍛えられるし、バイト代もあげるよ」

「うーん、考えときます」

「そうか。困ったことがあったら私のところへおいで。私の名はアーパスだ」

「ああ、ええっと、僕はアグネスです。それじゃ・・・」

アグネスは半ば逃げるようにその場を去った。

「ふぅ、あんなに急ぐことないのに。そういえばアグネスとやら、どっかで聞いたような・・・ああ、今活躍している新人レーサーか。売れっ子だねぇ」


アグネスは反対側の集落のはずれまで来た。

こちらは畑があり、小さな芽が太陽に向かってのびている。

「ここにはQ'sファクトリーは無いのか・・・」

アグネスはQ'sファクトリーを探していたのだった。

実は、登山の途中でミッションの一部が壊れてしまい、2速までしか出なくなっていたのだ・・・。

直したいのに直せない。

あきらめたアグネスはさっき来た道を戻る。

ああ、これじゃあまたアーパスさんの前を通らなくちゃならないよ・・・

案の定、アーパスさんは同じ場所にいた。

でも、アグネスを見て少し驚いた顔(?)をしている。

「そうしたんですか?」

「え、だって君は今宿に戻ったところじゃないのかい?」

「え?予約するのに宿に入って、それっきり入っていませんよ」

「でも、いまさっきココの前を通って宿に向かったのは確かに君だったよ。ボディも色も同じだし」

「?!」

「あれ、おかしいな・・・もう私も年だからなあ・・・ボケてきたかな?」

「やっぱり見間違いじゃないですか?それとも未来が見えたとか」

「うーん、そうかも・・・」


アグネスは宿に戻り、食事をとり、部屋に戻るとすぐ寝てしまった。

アグネスはその夜、いやな夢を見た。

みんながレースでどんどん勝って行くのに、自分だけ勝てない。

バラートやハセガワ3131から見放される。

そして、むこうから誰かがやってくる・・・

黒いボディだ・・・

そこで目が覚めた。
アグネスはすごい冷や汗をかいていた(?)。

(ああ、いやな夢を見てしまった。初めての場所に来ると、いつもこういう夢を見ちゃうんだよな・・・)

アグネスは家族旅行のときも、ホテルでいやな夢を見ては起き、両親を心配させていた。

アグネスはまたすぐ眠りに着いた。

今度はいやな夢は見なかった。


翌朝。

アグネスは宿で朝食をとり、外に出る。

何となく周りを見渡してみた。

と、アグネスは何か気づいたようだ。

「・・・パーツショップがある!初めて来た時は気づかなかったな・・・よし、新しいミッションが必要だし、ちょっくら寄ってみるか」

アグネスはパーツショップに向かった。


パーツショップの中は外の田舎テイストとは違い、町に戻った感じさえさせてしまう造りだ。

しかもこんな山の上にあるのに豊富な品揃え。

どうなってるんだ、ここ。

それはさておき、アグネスはミッションの陳列棚に向かった。

「ワオ、いっぱいあるなあ・・・」

説明書きの看板にはこう書いてある。



★当店はワールド1の品揃えを目指します!★

・当店が品揃え豊富な理由
ここ、マウンテン・マウンテンの土地は安いので、店を立ち上げたり維持費にかかる費用が抑えられて、拡大できるから。

只今、当店のミッションの品揃えは、ワールドで3番です!

・品揃え一覧
AT・MT4ノーマル
AT・MT4クロス
AT・MT4ワイド
AT3まちのり
AT3カントリータイプ
 ・
 ・
 ・



こんな感じでずらーっと下まで書いてある。

「どんだけ宣伝しているんだろ、この店。もしかして、あまりお客が来ないからやっていたりして・・・大体、こんな所に大きなショップ建ててもわざわざ街から来る人はいないと思うよ・・・?」

まあそれは置いといて、アグネスはほしいミッションを探す。

脱初心者向けを中心に探していく。

5速の手ごろなミッションはないだろうか。

「AT5ノーマル、特に特徴はなし、か。AT5クロス、パワーが上がるけど最高速はむしろ落ちている・・・AT%ワイド、スピードは200位出るけど加速力が劇的に落ちる・・・迷うなあ・・・」

アグネスは、この3つのどれかに的を絞ったようだった。

長い間迷った末、AT5ノーマルを購入することにした。

「まあ、極端な性能のモノを選ぶよりかはマシだと思うからね・・・さ、レジで精算を済ませよう」


「AT5ノーマル1点で、750Gです」

「他のパーツよりかは高いんですね」

「まあ、歯車の大きさとバランスを決めるのは大変ですから・・・ポイントカードはお持ちですか?」

「あっ、忘れるとこだった、はい」

「7ポイント・・・君、今レベル1かい?」

「実は、次のレースでレベル2に進めるかもしれないんです」

「おお、君はすごいな、ほとんどパーツを買わずに勝つなんて。大体の選手は30ポイントぐらい貯まっている頃だぞ」

アグネスはオールラウンド+4を貰っていたから来れたわけだが、あえてそれは言わないでおいた。

「じゃ、7ポイントつけておいたからね」

「はい、ありがとうございます」


アグネスはルンルン気分でパーツショップから出てきた。

「これでミッションが変わってスピードもアップするぞ!・・・そうだ、ここにはQ'sファクトリーが無いんだった・・・ 買ったのに装備できない・・・そうだ、アーパスさんに相談するか」


「おーい、アーパスさーん、アグネスですー」

遠くから呼びかける。

「おお、アグネスか。どうした?」

「実は――」

「・・・そうか。まあ、確かにここにはQ'sファクトリーは無いからな。よしっ、ついて来い」

「あっ、はい・・・」

2台は、アーパスさんの畑の隣にある彼の家の裏手にある、大きめな倉庫へと向かった。


「・・・よっと、この倉庫は全然使っていないからすっかり建てつけが悪くなってるな、どうだ、この倉庫は。すごいだろう」

倉庫の中は農業用のパーツばかりあると思っていたアグネスはびっくりした。

確かにそのようなものも見受けられるが、大部分はパーツの山とQ'sファクトリーにあるような機械や道具だった。

そして沢山の優勝カップ・・・え?!ここに優勝カップが?!

「私は、昔レースや整備士にはまっていたものだ。私、何でも完璧に揃えないと落ち着かないタイプだから、いろいろ買ってしまうんだ。 おかげでこのとおりさ。でも、しばらくやっているうちに飽きてきて、今はこのとおりさ」

「でも、レースは強かったんじゃないんですか?カップがあるし」

「そうなんだ、ずっと優勝していると、かえってレースをするのが虚しくなるんだ。分かるかなぁ」

「・・・分からないなぁ・・・」

「そうか、じゃあ先に言っておこう。君にはレース仲間はいるかい?」

「はい、今のところ2台・・・」

「じゃあ、その2台を大事にしろ。絶対、絶交してはいけない。――今言えるのはこのぐらいだが・・・覚えておいてくれ」

「はあ・・・」

アグネスは、アーパスさんにミッションを替えてもらった。

これでぎしぎし言うAT4ノーマルとはお別れだ。

アーパスさんは、久々に道具をいじるはずなのだが、慣れた手つきで作業をしているのに気がついた。

それにアグネスは、道具がそれほどほこりを被っていないことにも気づいていた。

もしかして、ココに来るレーサー達のパーツ交換を普段からやっているのでは、と思っていた。

「はい、終わったよ」

「・・・え?あ、ありがとうございます」

他の事を考えていたら上の空になっていた。


アグネスは宿に戻り、少しトレーニングをしてから寝たのであった。

ただ、またあの夢を見てしまっていた。

いつも、黒い車が自分のほうへ来るところで目が覚める。

奴が誰なのか知りたいのに分からない・・・


その頃、アグネスの外見だけそっくりさんは空き家にいた。

部屋の隅で、何かやっているようだ。

それが何なのかは見当もつかない・・・



QC暦0098年4月13日(月)
走行距離 75Qkm
所持金 4250g
ポイント 14ポイント
??? ???



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