Chapter18(4/4ページ目)
北の研究所
「ワシがココに来た理由は分かるか?」
二人は研究所の応接部屋で、長テーブルを挟んで向かい合って座っている。
二人の対話だから、勿論長辺で向かい合って座っている。
短辺で向かい合っていたら、遠すぎるわ人がいないわでバカバカしい。
もっとも、二人だけの対話で長テーブルを使うのもバカバカしいが・・・
トロピーは自分で紅茶を淹れ、コルテックスにも渡した。
スコーンにジャム、クリームもセットだ。
スコーンの狼の口がパックリ開いていて美味しそうである。
こんな形式的な雰囲気を整えるのがトロピー流だった。
自分のところに来てくれた客人なのだから、それ相応の待遇は忘れない。
コルテックスは椅子に座り(椅子の足が高かったので、座るのに少し苦労した)、トロピーがティーセットの準備を終えるや否や口を開いたのだった。
『分かるか?』という口調からして、待ち時間にイライラしていたのは明白である。
「ワシがココに来た理由は分かるか?」
もう一度同じことを言った。
大事なことだったから。
エヌ・トロピーはイライラした素振りのコルテックスをよそに、落ち着いて応対した。
「勿論、オルモスト(almost、大体)察しはついていますね、えぇ」
「じゃあ・・・」
「彼はまだミーのラボにステイしていますよ」
「そうか、、、良かった」
コルテックスは、一瞬安堵の表情を浮かべた。
しかし。
「シャラップ! 良くありません!」
エヌ・トロピーが珍しく説得口調で強く言った。
「もそもそ・・・じゃなかった、失礼――そもそも、ドクター・エヌ・ジンはどうしてここにヴィジットしてきたのですか?」
「・・・」
「まったく、ホワイな事ね、アンビリーバブルよ」
「前にも言った、ワシは悪くない、アイツが余計な口出しをするからだ」
「・・・とかなんとか言いながらも、ユーはミーのラボにヴィジットしてきました。本当はミート(meet、会う)したいのでしょう?」
「ワシは安否が気になっただけだ」
コルテックスはそう言った。
「なら、単純にミーにコールするだけで良かったのでは? ミーが意地悪をして何も教えないとでも思っていました?」
・・・。
・・・。
「分かりました、連れてきましょうか?」
暫くの間の後、エヌ・トロピーは口を開いた。
「どうせなら、早く物事を済ませてしまったほうが楽でしょう」
「・・・そうだな、頼もうか――」
コルテックスはゆっくりと口を開いた。
部屋の片隅にある、何だか分からないような機械が不規則にカタコトと音を立てている。
一方では、窓際に置かれた歯車仕掛けの機械が規則的な音を立て続けている。
そのふたつの音は中々噛み合わなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
コルテックスはトロピーを静止させた。
「なんです、博士?」
トロピーの声は若干イライラが混じっているように聞こえる。
「やっぱり、気持ちの整理がついてから会いたい。――今はちょっと・・・」
コルテックスが恥じるように最後の言葉を呟いた。
エヌ・トロピーはコルテックスの方をチラリと見た。
窓際の機械をじっと見つめている。
「・・・ユーがそう望むなら」
エヌ・トロピーはそう言うと、そのまま奥の部屋に行ってしまった。
コルテックスは扉が閉まる音を聞いた途端に、目の前にあった紅茶を一気飲みした。
額のNマークの上には、冷や汗がタラタラ垂れていた。
ここに来る前、自分自身でこう考えていた。
この先にいるのか?
協力は得られるか?
それとも・・・?
1つ目は正しかった、2つ目も正しかった。
そして3つ目も正しかった・・・なって欲しくは無かったが自分でそうしてしまった。
コルテックスの頭の中では、歯車が上手くかみ合っていないようだ。
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最終更新日(11.08.31)
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