Chapter15(4/4ページ目)
帰還、そしてすれ違い
「・・・ふぅ、やっと戻れた」
クラッシュは溜め息をついた。
思っていたよりも長い空の旅になったからだ。
何より背中の毛が無くなってしまったのはショックそのものであった。
コルテックス云々の話よりも、これのほうがクラッシュにとっては深刻だ。
ダンスなんて出来ない。
外にいるのが恥ずかしい。
他人に見せる顔――では無く、背中が無い。
とにかくクラッシュは早く家に戻りたかったようだ。
「あーあ、こんなときに理想のカワイコちゃんを見つけられてもなぁ」
クラッシュは既に何回もこんなことを言っていた。
暑いタスマニアに辿り着いても、ボロ毛布を脱ぐことはしなかった。
家の前までクラッシュはダッシュし、ジャッキーもトコトコと追いかけた。
そして丸いドアをバタンと開けて中へ滑り込む。
ジャッキーも中に入ると、その瞬間にドアがバタンと閉まった。
「ふぅ・・・」
「そこまで他人の視線に怯える必要は無いんじゃない?」
「うーん・・・」
「とりあえず、手当てを――」
「触んないで!」
「ヒッ」
「・・・アッ・・・」
「・・・」
「・・・いや、大丈夫さ。自然に治るって」
クラッシュは、敵であるジャッキーに傷を触られるのが嫌だったようだ。
もしくは、傷をさわられること、それ自体が嫌だったのかもしれない。
ボロ毛布で傷をもっと覆い隠して、まるで奇妙な「さなぎ」のようだ。
ジャッキーは半分ムスッと、半分悲しそうに「そう」と言った。
クラッシュはその日、ずっとこのままでいた。
リンゴもいらないようで、毛布にくるまったまま、そそくさと寝てしまった。
今はコルテックスのことなど頭から完全に抜けている。
「・・・ボクも寝ちゃおう――」
ジャッキーも適当に横になって、辺りは静けさを増した。
カーテンを通した窓の向こう、家の周りでは、またピカールが沢山群がっている。
カーテンを通して入ってくるその光は、不思議と穏やかな気持ちにさせてくれるものだった。
「・・・・・・」
そんな光をジャッキーはボーッとしながら見ていた。
今のままでいるのと、記憶が戻るのと、どちらがいいのだろう。
どうせなら、記憶が戻ってこなければいいのに。
そうしたら、変な心配をしなくても済むのに。
(記憶が飛ばなければ、こんなことも思わなかっただろうけど)
・・・。
・・・。
まぁいいや。
自然に任せればいいか。
今考えたところで、どうにかなるわけでもないし・・・
ジャッキーがそう思ったとき、ピカールの光が一瞬陰ったように見えた。
まだ、夜は始まったばかり。
今宵は長くなりそうだ。
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最終更新日(11.04.13)
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