Chapter14(6/9ページ目)
会いたくない、けど会う
とりあえず閑話休題、というのはここまでにして、そろそろ戻ります。
クラッシュはドアの前で手を伸ばしかけていた。
クラッシュの頭の中は不安だらけで、押し潰されそうなぐらいだった。
ココはどういう態度をとるんだろう。
入ったら、何かまたやられちゃうんじゃないか。
何もしてくれなかったら、オイラ逹はどうするんだろう。
って言うか・・・
なんでこんなに考え込んでるんだろう。
どういう結果になろうが、開けないとなんにも始まらないよな・・・
・・・。
・・・。
よしっ、――行くぞ!
クラッシュは意を固めてドアノブに手をかけようとした。
しかし――
ガチャッ・・・。
「・・・アッ」
「・・・そこまで恐がること無いでしょ?」
クラッシュは飛んでくるかもしれない空手キックに対して構えをとろうとしていたものだから、一瞬どうなっているのか分からなくなっていた。
ジャッキーは、対して驚く様子も見せない(驚くことが無かった)。
「私、そんなに恐い・・・の?」
ココは半ば傷つけられたように言った。
「え?・・・あ、いや――別にそんな訳無――」
「本当?」
クラッシュの言葉を遮って強く言った。
「ちょっと待って、そこだよ、問題は」
クラッシュはココの気持ちを押さえ付けるのに精一杯だった。
「そうやって突っ込んでくる聞き方がダメなんだってば」
「えっ・・・私、別にそんなきつく言ったつもりじゃ――」
「『言ったつもり』でもそう聞こえるのっ!」
クラッシュは語尾をちょっと強めて反論した。
ココは何か言い返したそうな、悔しそうな、そんな表情を覗かせた。
部屋の暖房の無機質的な音がブーンと低音を鳴らしていた。
「・・・お兄ちゃん」
「ん?」
「今のはキツい言葉だよね、自分の意見を相手に一方的に押し付けて」
ココはクラッシュの『っ!』が癪にさわったらしい。
クラッシュも少しカチンときたようだ。
クラッシュの、くるんでいる毛布がプルプル震えているように見えた。
「そういうこと言うならさ、自分のことを見直してから言えよ、オイラだって言いたくて言っている訳じゃない」
「・・・お兄ちゃんこそ――」
「なんだよ」
「自分の行動を正しなさいよね、周りにどれだけ迷惑がかかっているか知らないでしょ?」
この一言で、部屋の中に張り詰めた空気が光速レベルで広がっていった。
ジャッキーは目が離せないのと同時に、また忘れられていることに引け目を感じていた。
「何だよ、可愛くないのっ」
「そっちこそ、オツムの治療でもしてもらったら?」
「何だって?!」
「何か言ったらどうよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・フフッ」
「もうやめてくれよ、見苦しい!」
ジャッキーが思わず声を張り上げた。
でも、兄妹にその悲鳴のような願いは届かず、張り詰めた空気と暖房のうなる低音で再び部屋は満たされた。
「・・・モグラは引っ込んでなさい」
ココは冷たく言い放った。
ジャッキーはこの一言でとても寂しくなった。
何かしたくても、磔にされたようで何も出来なかった。
「・・・」
ジャッキーはポカンとして経緯を見守るしか出来ない。
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最終更新日(11.04.13)
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