Chapter11(1/4ページ目)
その頃あの人は

ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・

地面を引きずるような重い足音。

ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・

くたびれたような、かすれた声。


重い図体を引きずるように、海へと向かう。

片手にはめているアームがとても重たく感じる。

まるで、自分がそのアームに締め付けられ、追い詰められていくみたいだ。

『アームに追い詰められる』というのもおかしな表現かもしれないが、今のアームは、彼にとっては邪魔な鉄の塊だ。


今、そこにいる理由を失ってきたからだろうか。

なんだか、気が狂いそうだった。

「けっ――なんか最悪の気分だ・・・」

クランチは、何もせずにただた、歩いていたから、クタクタだし、正気を失いかけていた。


最初は島の中央に行こうと思い、途中で考えを変えて海へと向かい、それでもやっぱり――と、何度も同じことを繰り返していた。

戻りたくないのか、歩くのをやめたくないのか。

分からないけど、まるでそれが最後の目的であるかのように歩き続けていた。

驚くことに、あっという間に時間が経っていて、気付けば辺りはゆっくりとビロードの幕が下ろされていくようだ。

「・・・」

クランチは、やっとその場で立ち止まり、ふと空を見つめた。

彼と空の間には、深い緑が生い茂っていた。

見上げたとき、丁度、鳥の群れがバサバサと通りすぎるのが見えた。

自由な空がとても遠く感じる。

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最終更新日(10.06.01)
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