Chapter11(4/4ページ目)
その頃あの人は

「あーあ。中々見つからないな・・・理想の人・・・」

対象は人ばかりでないのは周知のことだと思う。

スウィーティは、あれから一日この島を散策して、自分の相手探しをしていた。

でも、スウィーティの要求する条件が高かったせいだろうか(多分そうだと思う)、理想の男性像を持つものを見つけられていなかった。

「ワタシには、あのタスマニアン・タイガーしかいないって言うわけ?そんなの絶対信じないから!」

ワタシは、タイニーを好んでいる訳じゃない。

むしろ、向こうが勝手にワタシを好いているだけ。

バカなタイニーでさえ惹き付けてしまうワタシの魅力も捨てたもんじゃない(まあ、元々男に捨てられたことなんて無いけど)。

「もう島は回っちゃったし、どうしよう――」

スウィーティはこれからどうするかをチラッと考えてみた。

まず、ハゲオヤジの元に戻らないのは確かね。

逆に向こうからやってきたら噛みついて引き裂いてやるんだから。

(ワタシが醜悪だって?ワタシはあくまでタスマニアン・デビルだもん♪)

かなり小悪魔的なオーラを振り撒きながら、そのまま歩く。

ただ、もう夜分遅いこともあって、寄ってくるものと言えば、ピカールとそれを避けたがるコウモリぐらい。

暗所を好むネズミたちは、そんな戯れに寄るはずがない。

「・・・って、ワタシはネズミに興味なんて無いから!」

それは失礼。

とにかくスウィーティは歩き続け、気付くと鬱蒼とした茂みの右向こうからさざ波の音が耳に入ってきた。

「あれっ、ここって――」

一日前と同じ情景があった。

小さな、小さなゆとりのビーチ。

この前と違うのは、カニが一匹、青白くなってひっくり返っていたこと。

もうひとつは、体格のいいバンディクーが、その近くで横になっていたこと。

カニに背中を向けていなかったら、まるで種族の違う親子のようだった。

スウィーティは自分の気配を隠しながらゆっくりと近づく。

「あら、アイツは・・・」

クランチは寝言をムニャムニャ言いながら横になっていたようだ。

「う〜ん・・・俺が悪っ――悪かった――よぉ――」

勿論、スウィーティは何が悪かったのか知っているわけがない。

クランチはとても浅い眠りに入っているように見えた。

背中と首をもどかしそうにしていたからだ。

そして、寝返りをうった。

「あっ」

スウィーティは思わず声を漏らした。

で、それがクランチの耳に入ったのかどうか分からないが、クランチは「う〜ん・・・」と頭を痛そうにしながら目を開けて――

「・・・!」

「・・・!」

まるでスローモーションのビデオを見ているようだった。

でなければ、一時停止したのかもしれない。

お互いに、どう態度をとるか、鈍っていた頭を思いっきり回転させた。

いわゆる、気まずい感覚だ。

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最終更新日(10.06.01)
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