Chapter7(5/6ページ目)
一夜明けて・・・
さらに同じ頃、スウィーティはデートを終えて、暇つぶしに海岸で一人日光浴を楽しんでいた。
そこはとても小さな穴場で、クラッシュ達も来たことが無い。
「フフッ・・・こういうところもたまにはいいわね・・・あ〜あ、早く理想の彼氏が欲しい〜――そして、こんな素敵な場所で一緒に・・・」
気持ちの落ち着く静かな波の音がする中、スウィーティは一人妄想に浸っていた。
このときばかりは小悪魔のオーラも感じられなかった。
カニは潮を吹きながらザワザワと群れ合い、海の水に体をくすぐられながら当ても無くそこにいて、そんな様子をスウィーティはボーッと見ていた。
人工科学の匂いがその場から消えかかった頃――といってもそんなに時間はかかっていない――スウィーティの携帯電話が鳴り出した。
スウィーティはハッとして。
すぐさま画面を確認して。
そして。
小悪魔の醜悪な顔が、ガッカリの表情と共に戻って来た。
電話をかけてきたのは『あの』ハゲオヤジだった。
「出てやるもんか!かったるいしぃ〜・・・」
スウィーティは電話を取らず、そのまま電源ボタンを押した。
そして携帯電話を砂浜に投げ出した。
携帯電話はカニの横にサクッと音を立てて落ちた。
「あ〜あ、マジでKYなことやってくれるわ〜。気分ぶち壊しって感じ・・・」
しかし、一分ほど経ってまた携帯電話が鳴り出した。
案の定、相手はコルテックスだった。
スウィーティは一瞬だけ躊躇した後、嫌々通話ボタンを押した。
「もしも――」
「ちょっと。何のつもりよ」
「えっ?」
「っていうかぁ、マジウザいんだけど〜。折角バカンスを楽しんでいたのに、雰囲気ぶち壊しよ?」
「あの・・・」
「雰囲気はお金じゃ買えないのよ?プライスレスなのよ?どうしてくれんのよ、私の傷付いた気持ち」
「あのな、スウィーティ・・・雰囲気は一緒にいないと分からんだろうが・・・まあいい。すまなかった」
「・・・」
「で、こんなときに悪いんだが・・・私のところに戻って来てくれるか?人出が足りないんだ」
しかし、ムスッとしたスウィーティにはそんな言葉など耳に入ってこない。
「誰がアンタのとこに戻んのよ。ま、差し当たりアンタの性格だし〜、部下に逃げられた、ってとこかしら〜」
見事、図星に当たってしまったコルテックスは絶句した。
エヌ・ジンと言い争ったときのことが蘇ってくる。
「もしかして当たった系?やっぱ〜、その性格を治さないとダメダメって感じ〜。とにかく、私は戻らないから。じゃあね」
コルテックスに反論をする時間なんて微塵も無かった。
グイグイとスウィーティに押され、そして切られてしまった。
スウィーティはまた携帯電話を投げ出した。
今度はカニにヒットして、脳天をまともに食らったカニは泡を吹きながらひっくり返った。
でも、そのカニを気にする余裕が――心のほうの余裕が――無かった。
「あー、ムシャクシャする!また誰かと遊びたくなってきたわ」
スウィーティのイライラは、今や底無しだった。
スウィーティーは立ち上がり、その場を去った。
携帯電話を片手に、次の不運な運命になるであろう相手を探しに・・・
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最終更新日(10.06.01)
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