Chapter5(1/3ページ目)
喧嘩
「おお、見えてきたぞ!タスマニアだ!」
出航してから二日目の朝。
エヌ・ジンの造った潜水艦は見た目以上に高性能で、あっという間にタスマニアに着いてしまった。
三人は航海中、「僕らは黄色い潜水艦に乗っている」なんて歌ったり、
コルテックスは船内研究室でエヌ・ジンと秘密の実験、ジャッキーは転がりの練習をした。
転がりは、いざというときのために完璧にしておけと言われていたのだ。
『いざというとき』とは、クラッシュ達に見つかることを言うらしい。
目指す地を前に、三人の意気は高揚していた。
それからは短いようでとても長かった。
島が見えているのに、なかなか島までたどり着かない。
なんてったって、まだ何ノットもあるのだ。
手を目と島の間にかざせば、島は手の影に隠れる。
まだ、それくらい遠かった。
目の前にプレゼントがあるのに、それを貰えない気分だった。
「エヌ・ジン、もうちょっと飛ばせないのか?なんていうか、こう――」
コルテックスは、手を横にサーッと動かした。
「――ビューンと行けないのか?」
「そうですな、不可能ではない」
「じゃあ、早く早く。飛ばしてくれよ」
「しかし、アー――まあいいか――じゃあ、行きますよ・・・」
エヌ・ジンは、服から大きなコントローラーを取り出した。
その大きさときたら、今まで服の中に入っていたなんて考えられない程だった。
「おい、お前の白衣には四次元ポケットでも付いているのか?」
コルテックスが訝しそうに尋ねる。
「まあ、拙者の科学力の総決算みたいなものですな」
「ふーん・・・エヌ・ジン、お前、もしかしてワシより――」
その時、潜水艦のスピードが急に上がり、話すどころでは無くなってしまった。
あまりのスピードで、コルテックスは壁に掴まらなくてはいけなかったし、ジャッキーはマトモに転んでしまった。
しかし――
「グェッヘッへ・・・飛ばすゼィ!!」
エヌ・ジンの性格は急に変化した。
「酌変」という言葉を使うには相応し過ぎるぐらいだ。
今までの落ち着いた印象はどこにも見当たらなかった。
(コイツ、カートに乗っている時もこんな感じなのか?・・・うーん、分からん)
それからは、本当にあっという間だった。
速過ぎて他のことを考える余裕が無かったからかもしれないけど、それにしてもとにかく着くのは早かった。
もう、あの海岸は肉眼でも確認出来た。
穏やかに岸に打ち寄せる波、ハサミをチョキチョキさせているカニやら、ヤドカリやら・・・
ビーチボールに、二組のビーチチェアとパラソル、それと、何故か破れたサッカーボール。
間違いなく、目的地に着いたのだ。
音も無く潜水艦は浮上し、間もなく着岸した。
「さあ、着いたぞ・・・ジャッキー、ここからはお前の活躍に期待している。やることは分かっているな――くれぐれも見つからないように」
「はい・・・じゃあ、行ってくるじょ・・・」
ジャッキーは一人上陸し、そして森の中に消えていった。
コルテックスとエヌ・ジンは、合図があるまで潜水艦に居ることにしている。
エヌ・ジンは潜水艦を少し沖のほうまで移動させ、一息ついた。
タスマニアは自然が笑っていたが、潜水艦の中は冷たく質素な空気に包まれていた。
そして、その冷たい空気がこの島を脅かそうとしている・・・
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最終更新日(10.02.07)
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