Chapter3(1/3ページ目)
コルテックスとエヌ・ジン

ところで、アクアクの「見張られている」という感覚は間違えてはいなかった。

クランチの「コルテックスに関係がある」という考えも間違えていなかった。



それは数日前のこと――



ここはとある研究所。

辺りには雲だろうか、霧だろうか、研究所から出る煙だろうか、とにかく辺りには『もや』がかかっていた。

時間は朝なのに、今は雷雲がかかっていてどんよりした雰囲気を醸し出している。

とても『いびつ』な外見で、研究所というよりはむしろ城ではないかと思ってしまう。

その中のある一室で、「彼」は悩んでいた。

「はぁ・・・ワシはどうすればいいのだ・・・もう何度も――そうだ、数え切れない程にアイツにやられてきた・・・」

彼の名はネオ・コルテックス。

クラッシュの『第二の人生』をつくり出し、それ以来永遠の宿敵だ。

彼の夢は世界征服。

「そう!ワシが皆を見下し、そして皆がワシを崇めるのだ!ウワッハッハッハ・・・ハァ・・・でも、その夢を毎回あのバンディクーがぶち壊す・・・」

そう、今までクラッシュ達はコルテックスの計画を打ち砕いてきた。

コルテックスが世界征服をしようとするたびに、クラッシュ達に野望を阻止されていた。

なので、コルテックスはいつの間にか目的が変わっていた。

世界征服から打倒バンディクーに・・・。

それが世界征服の大前提だと思い込んでいた。

今までもスーパー・バンディクーを創り出したり(クランチのことだ。言うまでも無く、今は洗脳が解けてクラッシュ側に付いている)、ココに変装してやっつけようとしたり(逆にやられてしまった)、ドライブ中のクラッシュ達を奇襲したり(最初は良かったものの、最終的には負けてしまった)・・・



コルテックスが一人嘆いていると、部屋のドアが開き、一人の男が入って来た。

「失礼しかまつりまする、コルテックス殿――ん?どうされました?」

彼の頭には、何とミサイルが刺さっている。

コルテックスは振り向き、彼と向き合った。

コルテックスの顔は少ししわくちゃになっていて、目は少し赤くなっていた。

泣いていたらしいが、敢えて隠すようなことはしなかった。

「おぉ、エヌ・ジンか・・・。丁度良かった・・・」

「?」

「ワシはな、今悩んでいるんだよ」

「――と、言いますと?」

「ワシは早く世界征服をしたいのに、その度にヤツらにやられておる。何を――やっても――失敗ばかり!・・・もう望みさえ無くなってきた気がするし・・・はぁ」

「なるほど――確かに左様ですが――拙者のマシンもどれだけやられたことか――いつも向こうが上手を行っている――」

「そうだ!いつも同じことの繰り返しだ!何か画期的なアイディアを見出さなくてはならない!私のバカ、バカ、バカ!なんで何も思いつかない・・・」

コルテックスは自分を責め始め、エヌ・ジンはそんなコルテックスに何も出来ず困惑していた。

それからしばらくの間、部屋には沈黙の空気が漂った。

唯一、外の味気の無い無表情な風の音だけが沈黙を破っていた。

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最終更新日(09.08.27)
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