Chapter3(3/3ページ目)
コルテックスとエヌ・ジン

コルテックスとエヌ・ジンが話し合いをしてから数時間後。

太陽は城の研究所の真上に昇っている。

研修所の周りを渦巻いていた不気味な『もや』は殆ど消えていた。



コルテックスは、自分のパソコンをいじりながらこれからの計画を立てていた。

既に彼は上機嫌で、鼻歌まで歌っていた。

その時、コルテックスの白衣のポケットから『コルテックスの世界征服マーチ』の着メロが聞こえてきた。

この曲、マーチとはいえども一応歌詞も付いていて、たまにコルテックスも口ずさんでいた。

どうやら電話がかかってきたらしい。

コルテックスは待ってましたとばかりにパッと携帯を取り、通話ボタンを押す。

「もしもし、コルテックスだが」

「もしもし、ジンです・・・」

「おお!待ってたぞ!どうだ、潜水艦のほうは」

コルテックスは期待のこもった熱っぽい声で聞いた。

エヌ・ジンは相変わらずの落ち着いた声で返事を返す。

「はい、上々で」

「そうか。ところで、スウィートルームは・・・」

電話を通しているのに、向こう側から殺気を感じたコルテックスは、思わず口を閉じた。

「これからどうします?早速、偵察を送り込みます?」

「いや、まだだ。やらなくてはいけないことがある」

「おっ・・・?研究ですな、何か最終調整することが?」

「いや、違う。昼食だ、ランチだ!」

エヌ・ジンは当然ながら拍子抜けし、言葉が出ない。

何てったって、こんな大事なときにそんな普通すぎることを・・・。

エヌ・ジンは気が緩みすぎだと言ったが、こう返されてしまった。

「エヌ・ジン、いくらワシが色々出来ても、頭でっかちのウスラトンカチでも、ワシは人間だ。ほら、『腹が減っては戦が出来ぬ』と言うじゃないか」

この武士道的な言葉と一緒に自嘲的な意味合いも含まれていたからか、狙い通りエヌ・ジンの考えを改めさせる効果があったようだ。

「それは、まっこと、誠・・・ウン。そうですな、拙者が間違えていたようだな」

「よし、じゃあ、景気付けの意味も込めて、今日はちょっと豪華にいこう。ディンゴに焼肉でも作らせるか・・・ミーティングルームで会おう」

「はっ、確かに・・・では、さらば、ですな?」

そして電話は切れた。

コルテックスの口元に、不思議と笑みがこぼれた。

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最終更新日(09.08.27)
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