Chapter1(3/3ページ目)
とある一日のはじまり
「なあ、クラッシュは聞いていたのか?まだ来ないじゃないか」
朝食の席でクランチはココに尋ねた。
どうも、二人だけだと変な感じがするのだ。
テーブルの上にはリンゴ料理と野菜が盛られている。
クランチは野菜ばっかり食べ、リンゴには目もくれない。
「クランチ、リンゴは食べないの?おいしいわよ、お通じだって――」
「あのさ、食事中に『お通じ』なんて言わないでもらえるか?それと、俺はダイエット中だ。リンゴなんていらないさ」
クランチはこう答えた。
ココの質問より、むしろ言動のほうが気になった様子だ。
そんな態度なんて無かったかのように、ツンとしながらココは言葉を返した。
「あら、リンゴだって体にいいのよ」
二人の間に、一瞬だけ沈黙が横切った。
クランチは急に「クラッシュを起こしてくる」と言って、朝食の席を離れた。
「はあ、やれやれ、だわ」
ココは呆れたように呟いたが、運よくクランチには聞こえなかった。
しかし、ココの考えは間違っていたようだ。
クランチは、本当にクラッシュを起こしに行ったようだった。
間もなく、まだ寝ぼけているように見えるクラッシュが、クランチとアクアクに連れられてココのところにきた。
ココは「あら、アクアクさんじゃない。おはよう。ところで、どうしたの、急に」と言い、
アクアクは「クランチが呼んだのじゃ、『クラッシュが起きねぇんだ、何とかならないか、アクアク』とな。
わしが『リンゴの山をおみやげに持ってきたぞよ』と言ったら、クラッシュのやつ、ガバッと起きて、あれはギネス並みじゃな」と答えた。
アクアクが喋っている間にも、クラッシュのわずかに開いていた目がとろんとなって、立ちながら「くぴ〜、すか〜、ぐぅ〜・・・くぴ〜、すか〜、ぐぅ〜・・・」を再び始めた。
「ちょっと、お兄ちゃんったら、また寝ちゃったの?」
ココは困ったような声を上げる。
昼寝のキングは、またしても眠りについた。
立ちながら寝ているのに、とても気持ちよさそうな、世界一幸せそうな顔をしている。
「仕方ないわ。クランチ、リンゴのパイをお皿ごとちょうだい」
クランチは渋々渡した。
いいようにこき使われているのが気に入らないのだ。
ココは、リンゴのパイをクラッシュの鼻に近づけながら言った。
「このリンゴのパイは私とクランチで全部食べちゃおうかしら。寝ているお兄ちゃんなんて放っておきましょう・・・」
そういった途端、クラッシュはまたガバッと起きて、「リンゴパイ?オイラにもくれよ・・・」と叫んだ。
そんな様子をみていたクランチとアクアクはちょっと恐ろしげに後ろを向いてヒソヒソ話を始めた。
「なあ、兄妹ってあんなもんなのか・・・?」
「妹に操られし兄・・・ココも小悪魔になったのう・・・」
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最終更新日(09.09.03)
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