入口 >> トップページ >> 小説 >> クラッシュ・バンディクー 乱れあう絆 >> Chapter 17
クラッシュ・バンディクー 乱れあう絆
◆
Chapter 17 「らしい」と「らしくない」
「ジャッキー、おはよう」
今日は珍しく朝早く起きた。
今晩はココもクランチもいなかった。
で、代わりに敵のジャッキーが来ている。
洗脳が解けたみたいだけど、たまに以前の――つまり、コルテックスの手下であるときの――ジャッキーが戻ってくる。
(もっと前の無垢なハリネズミは、クラッシュ自身と同じく戻っては来ないだろう)
そうだ、この前だって一瞬・・・
『ヘヘッ・・・いや、キシシ・・・かな』
だって。
どう付き合っていけばいいんだろう。
こういう関係になった今は仲良くしたいけど、正直恐い。
突然記憶が戻ってきたら・・・?
背中の針でグサグサッ・・・一丁あげられちゃう。
・・・。
どうすればいいんだろう。
クラッシュが思慮深げにしていると、ジャッキーがツンツンとつついた。
「何考えてるの?『らしくない』ね」
クラッシュは考えるのをやめて、慌てて言った。
「えっ、な、何が『らしくない』って?」
「クラッシュがクラッシュ『らしくない』って」
「アー、つまり・・・」
「クラッシュが考え込んでいるのって、すごく珍しいじゃん」
「まぁ、そうかもね」
「だから『らしくない』んだよ」
「何だよ、たまには考え事したっていいだろ」
「うん、まあね――ところでさ、何考えてたの? まだ答えてないぞ」
クラッシュは一瞬息をつまらせた。
ごまかすか、言っちゃうか。
「・・・」
「・・・?」
「・・・タウナのこと」
結局、はぐらかすことにした。
「なんだ、そのことか」
「『なんだ』って、オイラにしてみりゃ重要なことなんだぞ」
「だって、わざわざ隠す必要なんてなかったでしょ」
ジャッキーは少し横目に言った。
「ボクもそのことはよーく分かってんだからさぁ、もっとオープンに行こうぜ」
「な、なんだよ、うるさいな」
クラッシュは、その目を無理に逸らした。
とても不器用だった。
「まぁいいや、朝ごはん食べよう、クラッシュもペコペコだよね」
ジャッキーは深く掘るようなことはしなかった。
「今日はボクが何か作るよ、リンゴいっぱいの朝ごはん」
「ワォ、そりゃ楽しみだな」
クラッシュは明るい声で応えた。
「ハハッ、クラッシュ『らしい』や」
「えっ?」
ジャッキーは、ひょいと立ち上がってキッチンへ向かった。
「さ、早いとこ作っちゃお・・・」
「なぁ、さっきからオイラのこと、弄んでるだろ」
「なんのことぉー?」
キッチンからジャッキーのだみ声だけ返ってきた。
「さっきから『らしい』とか『らしくない』とかぁー、ちょっと生意気だぞぉー」
クラッシュも大声で返した。
そして、よっこいしょと立ち上がり、ジャッキーを手伝いに行った。