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クラッシュ・バンディクー 乱れあう絆
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Chapter 4 悪の始動パーティー
「では、今後の成功を目指して、乾杯っ!」
コルテックス側の主要メンバー――エヌ・ジンからはじまり、タイニー、ディンゴダイル、コモド兄弟、リパー・ルー、ピンストライプなど、大勢いる――がほとんど揃っている。
しかし、エヌ・トロピーはいなかった。
「乾杯っ!!」
みんなで贅沢な食事を囲んだ。
どれだけ久々のことだろう、こんなこと。
もしかしたら、一度だって無かったかも知れない。
誰もが好き勝手におしゃべりしている。
「ガォーッ!タイニー、はやく食べたい!」
「まあまあ、落ち着けよ、タイニー。もう食べてもいいんだぜ――どうだ、今日の焼き具合は?俺っちの火炎放射器の調子は最高だったからな」
「そうだな、いくらでも食えちゃうよな、兄貴?」
「そっれはお前だけだろ、モー。俺はそそっ、そんなにブクブク太ってなんかいないッゼ?」
「ふぅ〜、君達は品格が無いなあ。もうちょっと静かに食べることを知らないのか?それよりも――あぁ、タウナは元気かな・・・」
「まあまあ、ピンストライプ殿、とりあえず落ち着きなされ。きっと大丈夫ですよ・・・まあ、昼からパーティーが出来るのは拙者が早く仕事を終えたからですな。我ながら天才ですな」
「ん?!天才はアチキだじょ!イーッヒッヒッヒ・・・」
目の前の焼肉を前に、みんなの士気は急上昇していた。
コルテックスはそんな手下にとても満足していた。
「ン、ェへン・・・」
本格的にパーティーが始まろうとしたときだった。
コルテックスは、意味ありげに咳払いをした。
その姿には、いつも以上に悪のオーラを垣間見せられる。
その場にいたみんなは、期待の顔を浮かべながらコルテックスを見た。
ただ、タイニーとリパー・ルーは気付かなかったようだ。
「あれ?何でみんな黙ってるの?もうパーティーはおしまい?タイニー、もっとやりたい!」
「あれ?誰もアチキの天才なる自伝を聞かないンか?ア〜ッヒャッヒャ・・・」
と、二人ともこんな調子だった。
「あ〜、パーティーを楽しむのもいいが、そろそろ作戦を開始しようと思う。エヌ・ジンはワシと一緒に行動するんだ、他のヤツらは――って、ちゃんと聞けよ・・・」
コルテックスを熱心に見つめていた手下も、みんなまた焼肉にかぶりついていた。
コルテックスが喚いている間にも、焼肉は宙に消えゆくようにどんどん無くなっていった。
「おい、この焼肉は何の為だと思っているんだ?今の今からやる作戦の為だ!あくまで、景気付けなんだからな」
「まあまあ、コルテックス殿、今回は思いっきり楽しみましょうよ。次にいつこんなことが出来るか見当もつかぬ、満腹バンザイ!」
「満腹バンザイ!」「バンザイ!」
他のみんなもエヌ・ジンに続いて三唱した。
「はぁ、ダメだこりゃ。先が思いやられるわい・・・それより、早くアイツらを呼ばないとな――タイニー、ディンゴ!」
「ん?何だ?」「え?な〜に?」
この二人は、コルテックスに信頼されている部下だ。
この二人が居るからこそ、コルテックスの動物軍団がスゴく見える、それほどコルテックスにとっては重要な二人だ。
コルテックスは威厳を取り戻し、とても重要なことを話すかのように――まあ、実際に重要なことなのだが――言った。
「お前達に頼みたいことがある・・・」
城の研究所から再び騒ぎが起こった。
時間は丁度3時を過ぎ、辺りはまだ明るいが、『嫌な雰囲気』が漂っていた。
それから暫くして、コルテックスが先程にも増して疲れた顔をしながら外に出て来た。
何だかやつれているようにも見える。
それもそうだった。
コルテックスは、ウカウカにパーティーをしている現場を見られてしまったのだ。
ウカウカの言うことには、「何でワシを呼ばなかったのだ!」ということだった。
どうやら、ウカウカもパーティーに参加したかったらしい。
なのに、自分には秘密でパーティーを開いて・・・
ということで、コルテックスはお目玉をくらってしまった。
「大体、こんなのが一緒にパーティーにいたら台無しだ。それこそ『絶命パーティー』だよな・・・」
コルテックスがお目玉をくらっているときにこう言ってしまったから、状況はますます悪くなった。
本人はボソッと言ったつもりだったが、運悪くウカウカの耳にその言葉が入ってしまったのだ。
「貴様・・・今なんて言った?」
「えっ?いや、私めは何も申してなんかいませんが、アハハ――」
「嘘つけぃ!」
「ヒッ」
コルテックスは縮み上がるが、ウカウカは逆に怒って膨れあがったように見えた。
傍から見れば、ウカウカはコルテックスに被さっているように見えるほどだろう、それほど近い距離にいた。
「誰がいるとパーティーが台無しになるって?誰がいると『絶命パーティー』になるって?」
「それは・・・あの――なんだ、その――アー・・・」
コルテックスはしどろもどろして、片言が次々と飛び出し、言葉が繋がらない。
「ワシを除け者にしおって、お前はワシの目の上のたんこぶだ!」
「あの、これは、世界征服に向けたプロジェクトの一環で――」
コルテックスは事実を言った。
確かに、このパーティーは『作戦成功を祝う前倒しパーティー』ということにはなってはいたが・・・
「フン!まだ何も成果をあげてないお前が言えることか!いつもいつも、ワシをイライラさせおって。前に言ったよな・・・」
「・・・」
「ワシの命令を達成出来なかったのはお前だけだと・・・もう何年待ったことか」
「15・・・年位?いや、それ以上か」
「当たり前のように言うことか・・・?」
「あ、いえ・・・まさか、そんな滅相も無い・・・でも、あのバンディクーどもが邪魔をす――」
コルテックスの言葉はウカウカの怒りの呪いに飲み込まれて聞こえなかった。
もはや銅像のように固まっているコルテックスに向かって、ウカウカはさらに凄みを増している。
「それも――前に――聞いた!いい加減、成果の一つでも上げんかッ!」
「アー――実は、ウカウカ様、既に作戦は始まっているのです――」
コルテックスは作戦の内容をウカウカに説明し始めた。
段々とウカウカの怒りも収まったようで、最終的には感心したような面持ちになったように見えた。
「ふむ・・・いつもとは違うな。いつもなら、最初からドカンといく」
「はい、それが違いといえばそうです」
「やることは分かった。じゃあ――」
「?」
「――早く行ってこい!」
「――ったく・・・あの仮面はどうしてこうも怒りっぽいのだ、フン」
潜水艦の前に着いたときにコルテックスが愚痴った。
鼻の頭がもう少しで紫色になりそうなほどイライラしている。
「まあ、年寄りは気が短いと言いますからな、仕方あるまい」
エヌ・ジンは慰めるように言った。
「それはそれとして――」
エヌ・ジンはキョロキョロと周りを見た。
「このメンバーは珍しい」
「まあな、確かに。大きい奴が今回は一人もいない。本当に大丈夫かな・・・はぁ、せめてニーナだけでも一緒に行けたら良かった・・・」
「ああ、ニーナ様はワルワルスクールの宿題があるとか――『空き巣と泥棒の違いを実際に体験して調べる』とかいう」
「そうかそうか。ちゃんと育ててくれているようだな、あの学校は。ニーナの将来が楽しみだ・・・グフフフフ」
(何を考えているんだ?)
そうこう話しているうちに、一行は潜水艦が泊めてある断崖絶壁の海岸にやってきた。
断崖絶壁とはいえ波は穏やかで、何とか下に降りることは出来そうだ。
遥か向こうまで見渡せて、地平線が引かれたその風景は旅立ちに相応しい。
「フフ・・・ここから出航すれば誰にも追跡されまい。表の港にはおそらく何かがあるだろうからな」
一行はコルテックスが岩を削って造った秘密の階段を降りようとしたが・・・
「ちょっと!何よ、コレ!体が汚れちゃうじゃない!しかも――まさか、あの潜水艦に乗るんじゃないでしょうね・・・
センスがサイテーだし、これならデートに行っていれば良かったわ・・・」
手下の一人がくどくどと毒舌を吐いた。
コルテックスは困ったように言った。
「何?ワシの命令が聞けんのか!まぁ、今までも聞いた例しはないがな・・・分かった。作戦変更だ!タスマニアには、ワシら三人で行く!ワシと、エヌ・ジンと、ジャッキーで!
スウィーティ、お前は一旦帰っていろ。ワシが次の命令を出すまで何をしていてもいいから、命令を出したときは従ってくれよ」
スウィーティと呼ばれたそのタスマニアン・デビルは、ムスッとしながら来た道を戻った。
捨て台詞を残して(何よ!その上から目線。サイテーの中のサイテーね)。
暫くしてからその場に溜め息が交差した。
「あんなのに首ったけになるタイニーの気が知れんわ、まったく・・・」
「コルテックス殿、あれがあの娘の魅力で・・・」
「いいや、ワシは認めんぞ・・・本当、何を間違ったのか、未だに分からんわ・・・ジャッキー?」
コルテックスに突然呼ばれたハリモグラのジャッキーは、急に呼ばれたのでビックリした。
「ぇ、な・・・何だじょ?」
「お前はワシにいつも忠実だよな。いや、結構、結構」
「勿論だじょー。ボクちんはどこまでもコルテックス様に付いていくじょー」
ジャッキーは「キシシシシ・・・」と笑いながら、忠誠を示してくれた。
「やることは分かっているな?地味でつまらないだろうが、許して欲しい」
「大丈夫だじょー。任せて下さいませ、だじょー」
ジャッキーはどこまでもコルテックスに忠実だということをアピールする。
「じゃ、いよいよ出発だ!待っていろよ、クラッシュ・バンディクーめ・・・」
三人は、『黄色い潜水艦』にぞろぞろと入り込んだ。